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【9】何だこの放置プレー
兄崎はだんだん不機嫌になる。
劇的な関係の変化を望んでいるわけではないが、もう少し恋人らしいことをしたい。
1.やることは一つだ。兎に角セックスをしまくる。
恋人ならば互いを求め合うことはごく自然の成り行きだろう。
しかし正直キスすら、まだ一度しかしたことが無い。
そんな相手と、一日中快楽を貪りあうというのはハードルが高い。
お試し期間中に、せめてキス位は出来ないものか。
勿論ディープなやつだ。
あぁ、これはまだ無理だな。
お試し期間では難しいだろう。
2.デートをする。
ただし、一つ屋根の下二人で炬燵にもぐり込んで会話無く延々と漫画を読むことはデートとは認めたくない。
春日を見るが出かけようと声を掛けるのは躊躇われるほど、寛いでいる。
ラグに寝そべり自堕落に過ごしている相手に、出かけようと言っても「面倒」と言われるのがオチだ。
…出かけるだけがデートではない。
3.同じ屋根の下に居るのなら、二人で一緒に楽しめることをする。
例えば、DVD(スプラッターは除く)を見たり、一緒にゲームをしたり、何でも良いから兎に角一緒に何か一つの事を行うのだ。
セックス以外のお家デートなのだから、これくらいだろうか。
しかし春日は漫画に夢中だ。
4.折角一緒に炬燵に入ってるのだから、お茶を飲みながら楽しくおしゃべりしながら、イチャつく。延々と言葉無く漫画を読み続けるよりずっと良い。
3番と被るなこれは。しかし、お家デートの醍醐味は、プライベートな空間でイチャイチャラブラブと過ごすことだ。
そこまで考え、盛大なため息が出る。
…ネタ切れだ。
何だか1番以外は――イチャつくのは除いて――出かけたり、食事したり、ゲームやDVDを楽しむなんて、友人同士普通にしていることだと思う。ある程度クリアしていることだ。
では1番に踏み込むことに戸惑いがあるのか。
いや違う。ゆっくりと段階を踏みたいのだ。
今度は恋人として、2番、3番、4番をしたいのだ。
イチャイチャラブラブしたい。
とにかく…この状況を何とかできないものか。
それにしても1番だが、相手は同性で友人だった男だ。
とにかく大好きだから恋人になりたい。とにかく春日の特別になりたい。
その思いが強かった。
恋人という一つの目的を果たしたそれ以降の関係性に関しては、曖昧で全く想像していなかった。
性的に強い欲望を持ち共に過ごしていたわけではない。
恋人になったからといって行き成り体を結ぶのは少し抵抗がある。キス以上の事を当然望んではいるが、それよりもっと「恋人らしい事」を行いたいのだ。そうして時間をかけて愛をはぐくみ、ベッドインしたい。互いの気持ちが高まった瞬間に心身ともにロマンチックに愛し合うのだ。
「なんて事った」
「あぁん?何だよ優紀。さっきから。」
「混乱してきた」
兄崎は小さく呻いた。
要するに今現在の自分の境遇が不満なのだ。退屈で堪らない。
お試し期間とはいえ恋人なのは変わりない。
それなのに、何だこの放置プレー。
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