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誘惑
「ねぇ、今夜僕とどう?」
ゲイバーと呼ばれる店の奥のカウンター席、誰にも干渉されないここが俺の定位置。
馴染みの客はそのことを知っていて、俺には挨拶程度の声しかかけない。
カウンター内にいるままに目を向けると、両手を合わせてごめんと唇が動く。
「俺はいいよ。もう帰るつもりだし。」
「僕が声をかけたから?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。ただ、俺は今帰りたい、それだけだ。」
「だったら僕を連れて帰ってよ!セーンセイ。」
最後の言葉を俺の耳元で囁くように言うと、驚く俺の腕を取り店を出た。
そのまま駅に向かおうとするのを、大通りから離れた路地に連れ込み、壁に背中を押しつけた。
「積極的〜!」
「ふざけるな!! お前は誰だ?」
相手の顔の横に手のひらをバンっと打ち付ける。
「色気のない壁ドン…」
「だから、ふざけるなっ!」
「先生、必死すぎてやばいよ、その顔。」
「先生って何だよ?俺はそんなんじゃねー!」
「こんなに焦って必死になって、今更〜?」
「…お前、誰だよ?」
「分からないなんて悲し過ぎるよ、センセ!しょうがないなぁ…抱いてくれたら教えてあげる。」
「ぜってー、やだ!」
「何で?教えて欲しいでしょ?!」
「あいにく、俺はされたい側なんでね。お呼びじゃねぇってよ。」
「嘘っ!」
「はぁ⁈」
「あの時、体育祭の後でしてたじゃん、あいつと!僕、この目で見たんだから!」
たしかに…そんなこともあったなと思い出す。
「で、お前は何組の何さんだよ?」
「教えない!」
「お前なぁ〜〜〜!!」
「だから抱いてよ!そしたら教えるから。」
そう言って顔の横の手を握ると、親指から順に口に含んでいく。
「おい!」
その刺激に危うくこいつの思惑通りの展開になりそうなのを押し留め、一歩後ろに下がる。
「あーん、逃げないでよ、センセっ!」
そう言うと俺に抱きつき、大声出すよと脅迫めいたことを言い出した。
怒りが頂点に達し、そばにある公園に手を引っ張って入ると、トイレ脇の木々が数本ある影に入る。トイレでの情事を覗こうとしていた数人の輩がそそくさとその場を立ち去って行く。
そうは言ってもすぐそばで見ているのだろうが…。
木の一本に男の体を抱きつかせるようにして立たせ、その手首を背中側からネクタイで結ぶ。
え?と言う驚きから真っ青な顔になり、
体を捩るがもう遅い。
ズボンのチャックに手を伸ばし、ズボンと下着を引き摺り下ろす。
いやとかやめてとか喚いているが、これがお前の望んだことだ。
そう言って、指を舐めるとその穴に突き刺し中をほぐしていく。喚き声の中に嬌声が混じり、息が荒くなる。
「慣れてるな。」
そう言って、指を増やすともっと奥までこじ開けていく。
「あぁ、もういやぁ!もう、むりぃぃぃ!!」
膝から崩れ落ちそうになるのを抱き抱え、だったら堕ちろと指を引き抜き、俺自身をそいつの穴にあてがう。
それを振り向いて見ると大泣きして首を振る。
その声と顔に舌なめずりしながら一気に奥まで突き刺した。
最初こそ抗ったものの、段々と気持ちよくなってきたのか、口をだらしなく開け、俺の動きに合わせて吐息と甘い声を公園に響かせていく。
「堕ちたいならさっさと堕ちろ!」
そう言って一段と激しく腰を動かし、そいつの奥を突き上げると、体をびくびくと痙攣させ、木に白濁の液体を与えて果てた。
同時にそいつの中に注ぎ込んだ俺は、その意識のない顔の幼さに後悔に襲われ、しばらくは身動きひとつ取れなかった。
翌朝、学校の最寄駅のベンチに寝かせ、起きるのを確認してから学校に行った。
放課後に近づくにつれ、俺の股間が疼き出す。
図書室への道すがら、首のネクタイをスルッと取ると手首に巻いて、その端を反対側の手でピンと引っ張った。
見ているんだろう?
さっさと出てこいよ。
言うようにネクタイが引っ張られるたびに出す音につられるようにして、図書室から男が出てきた。
「せ…んせい」
「ここでは大人しいんですね。先生。」
司書という肩書きのネームプレートを引ったくるようにして取ると、それを合図のようにそいつは小悪魔のような笑顔を見せた。
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