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第6話※煌視点

「柊、ど?似てる生徒いた?」 「パラパラ人はいるけど、クロとは…体格違うな。」 冬夜の問いかけに、窓枠に頬杖をついた柊が答えた。 俺たちは準備室から、掲示板のメモを見る人を観察していた。クロの性格的に、ここに居てあれを見たら呼び出しに応じて来るだろうから、保険の為の確認だ。 「あ〜、だる。早くクロに会いたい。」 柊はだらりと窓枠から手を垂らした。 「おい。それなら、あんまりダラダラするなよ。馬鹿犬。」 「…」 ガンッ 「いったー!お前、外でフラストレーション発散させて来たんだろ!こっちにあたるな!」 柊が冬夜に蹴りを入れ、それを合図に揉め始める。柊はクロの前では忠犬よろしく尻尾を振っているが、実際は結構凶暴だ。今の状態は扱いづらい。あっちの世界でもよくクロに隠れて喧嘩をしていたし、こっちでも苛々すると言ってはよく喧嘩をしてる。 「柊、やめろ。お前はもういいから、ちょっと外で息抜きしてこい。冬夜も、もう挑発するな。」 「…」 ガタン 柊が苛立ちを隠さず荒々しく立ちあがった。そして着ているパーカーのフードを被り、無言のまま外に出て行く。 「……柊のあの状態久々だな。こっちの世界だと、火消しにも限度があるって分かってるよな。やり過ぎたらまずいだろ。あいつの喧嘩って、ほぼ一方的な暴力だし。」 「そこまで馬鹿じゃないだろ。」 「まぁな……。」 冬夜は冬夜で落ち着かない様子だ。その証拠に、先程からコツコツと忙しなく机を指で弾いている。そもそも、ああいう風に柊の事を煽るのも珍しい。 「はぁー、悪い。煌、俺もちょっと気分転換。外す。」 「分かった。」 少しして、冬夜もため息をついて外に出て行った。 まぁ、苛々はする。そもそもクロがこの学校にいると言うのも不確定事実だ。足掛かりもないので、焦る気持ちからくる苛立ちは際限がない。 ふと外を見ると、掲示板の前では保健医と用務員が何か会話しているところだった。 「……」 ---- 「来ない。」 「くっそイラつく。」 「……」 20時を少し超えて、クロは現れなかった。柊や冬夜があからさまに苛々としている。 「…あれ、見えるか。」 「……やっぱりそう言う事かな。」 「何?」 俺の問いに、冬夜は頷く。柊はまだピンと来ていない様子だ。 「ここからみて、東棟、西棟、体育館、三箇所に灯りがついている。」 「……クロ。」 柊も俺の言わんとしてる事に気づいたようだ。俺達のいる屋上から見て、東棟、西棟、体育館の三箇所のみ灯りが灯っている。この時間に普通の生徒がいない事は確認済みだ。となれば、その何処かにクロが居る可能性が高い。 「けど、三箇所って……明らかに分かれて来いって言ってるな。全部、距離的に結構離れてるし。」 冬夜が呟く。確かにそうだ。このままクロの誘いに乗ってやるか、無視して3人で向かうか…。 「どうする?王様。」 冬夜が先程よりも幾分機嫌良さげに聞いてくる。そりゃそうだな。何であれ、クロがここに居る可能性が濃厚になってきた。

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