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第17話

「じゃあ、また〜。」 ひらひらと手を振り、圭人が帰って行った。というか、いきなりバレてるし…。かなりビックリした。ハッキリと言わずともなんとなくで察してくれたので、助かったような恥ずかしいような…。 「日向、寝るか?」 「…うん、そだね。もう寝よっか。」 「……」 「?」 そのままお互い階段を登って寝室に行くと思いきや、玲次はそこから動かなかった。あ、 「玲次、一緒に寝よっか?」 「…そうする。」 こくりと頷き、玲次は歩き出す。その姿を見て、俺はちょっと笑った。玲次は表情や言葉は少ないが、コと分かりやすい。 「今日は、玲次の部屋でいい?俺の部屋、夏場は暑くなりそう…。」 「ああ。そうだな。日向の部屋は南向きだからな。」 「日向、俺トイレ寄ってくから、先に行ってて。」 「うん。」 ガチャッ 玲次の部屋に入ると、いつも通りの片付いた部屋だった。ただ、部屋の一角にある机上だけ、本が積み上げられている。どれも難しそうな専門書だ。きっと意味も分からないが、何の気無しに近づいてその本を見ていた。そこで、あるものに目が釘付けになった。 「……え、なんで……。」 チラリと目の端に写った。なんで、ここに…。恐る恐る、俺はその紙に手を伸ばした。玲次が、なんで…。本と本に挟まれ、隠すように置かれている。考え過ぎ?俺がするりと引っ張ると、やはりそれは 「職員名簿……」 「日向。」 「っ!!」 いつの間に戻っていたのか、急に後から玲次に抱きつかれ、俺は跳ね上がる程ビクついた。 「……あ、……れ、玲次……。」 「ははっ、どうしたの?そんなにびっくりした?」 玲次は後から首を伸ばし、俺の顔を覗き込んできた。その様子はいつもと変わらない様で、何処となくいつもと違う気がした。 「…ううん……。あの、…この名簿…」 「ああ、それ。日向を推薦した時、こんな感じの配置ですって、説明と一緒に渡されたんだ。」 「………そう…。」 「………。」 俺はぼんやりと頷いた。玲次の言う通りだ。きっと、そうだったんだ。納得しよう。でも今は、自分を抱きしめる玲次の手が少し怖かった。 「………日向、」 「んっ、…何?」 玲次が後からやわやわと頬擦りしてくる。吐息が首元にあたり、擽ったい。 「ねぇ…しよ?…日向、入れていい?」 「…え。」 「…入れたい……。」 「え、ちょっ、…んっ、ふっ、…、んんっ。」 そう言い玲次は俺の耳にキスをしながら、するりと俺の服の下に手を進入させてくる。やわやわと乳首を刺激されて、上擦った声が出てしまう。 「…っ、」 ぐっと体を引かれ、ベットに押し倒された。そのまま玲次は乗り上げてきて、またやんわりと優しくキスをしてきた。優しくて暖かくて、色々と、考えを手放したくなる。 「……んっ、わかっ、た…。」 ----- 「ふー、……ん?」 校庭で木の剪定をしている時、一休みと手を止めた時に見えた。俺は脚立に乗っていたので、そこから二階の空き教室に煌がいるのが見えたのだ。 「んんっ!?」 そして、その手元にキラリと光る物が見えた。俺はあわてて、伊達眼鏡を外して目を凝らした。 「うわっ、やっぱり……。」 煌が手に持っているのは俺のスマホだった。最近、嫌な予感は何でも当たるな…。どうしたもんか…。俺は脚立を降りて暫く悩み、意を決して歩き出した。あのスマホのせいで玲次に迷惑がかかるかもしれない。それならば、取り返さなければ…。 ----- ガラガラガラ… 俺は屈んだまま、そろりそろりと煌の居た教室に入った。見るとやはり、この教室に荷物が置いてある。 「あいつら…何しに学校来てんだ…。」 ……俺を探しにか…。 でも、授業中だからか、流石に姿は見えない。とりあえず、鞄らしき物を漁る。 「石?」 誰の鞄か分からないが、乳白色の綺麗な石の様な物が落ちてきた。俺は慌ててその石を鞄に戻す。 しかし…やっぱスマホなんて小さいもの、持ち歩いてるか…。他の鞄も漁るが、特にめぼしいものはない。諦めて戻ろう…。 「あれ〜、いいもんみっけ〜。クロじゃん。」 「!」

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