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第20話

「ふぁっっつつ〜〜〜っっつ!!!」 「……っ、はっ、」 抜かれると同時に、俺は息が詰まらせ痙攣し、一気に溜まったものを出した。 「はー、やべ。めっちゃ気持ちいい!」 冬夜が何か言って、抱きついてくる。俺はもう何処かをピクリと動かすのも億劫で、目だけで力なく冬夜を見上げた。 「お、終わったなら、さっさと外せ…」 「え?」 「………………冬夜とくっ付きたいから、早く外して?」 「うんうん。」 冬夜は満足気に笑い、俺の拘束と玩具を外していく。あぁ、身体中、バッキバキ…。もはや服を着るのも怠くて、半端に服をかぶったまま、座る。なにやら身体中についてる液体も気持ち悪くて、俺はティッシュでゆるゆると体を拭く。 「ごめんね。久しぶりなのに、ハードだった?」 「………」 何処となくすっきりとした面持ちの冬夜を、俺はじとりと見ながらも体を拭き終え、のろのろと服をきる。早く…シャワー浴びたい…。犬に噛まれたと思って、この事は綺麗さっぱり忘れて、風呂に早く浸かりたい…。 「あぁ、でも、クロ、凄い可愛かったー!」 冬夜がガバリと抱きついてくる。 「ねぇ、煌達は?本当に俺、まだ見つかってないよな?」 「大丈夫だって。煌達、クロをまだ見つけて出せてないし。最近はあっちの世界の仕事も忙しくて、中々ね…。今も帰ってる位だからな。」 「…あの扉使って来たのか?」 「そうだよ。」 「そうか…。俺の親父、元気か知らないか?」 「あぁ、この前見たよ。元気だったよ。煌のお父さんとも関係良好そう。」 「そうか…。」 とりあえずは良かった。親父も元気らしい。煌の父親と関係良好なら、食いっぱぐれもしてないだろう。 「…ねぇ、俺のスマホ知らない?」 「あぁ、煌が持ってたやつ?俺知らない。」 「あー、そうか…じゃぁ、俺の」 「ねー、色々教えて欲しいなら、明日俺達の家来たら、もっと教えてあげる。」 「え……。」 「それまでは、もう、おあづけー。」 「……」 めっちゃ罠だろ。こんな分かりやすいザル罠、逆にある?大体思えば、さっきの変態プレイで、冬夜の性癖は出し切った感あるし。潮時か…。扉の事はもっと知りたいが、深追いして捕まったら意味が無い。 「俺、制服着て、高校生のお家デート風に、やりたい。」 「………」 考える俺を他所に、冬夜は若干頬を赤らめてうっとりと言う。 え、えぇ…?!なんなの、こいつ…。 ドン引きな俺だが少し納得感は出てきた。 コスプレプレイか。あー、なんか急に納得。冬夜、それ凄く好きそう。分かりやすい変態だからな。これはまだいけそうかな? 「冬夜と俺の2人っきり?柊とか煌は、いないよな?」 「うん。あっちに戻ってるって!そんなに気軽に行き来出来ないの、クロだって知ってるでしょ。」 確かに、こっちにきた時は酷い乗り物酔いの様な症状を覚え、来て直ぐにぶっ倒れた。…そして、玲次が助けてくれて、病院に連れてってくれた。てか玲次の事考えると、罪悪感が半端ない…。 結局、明日も会うと約束させられ、俺は解放された。変態度は上がるが、解放されるあたりまだ冬夜でましだったと考えるべきなのかも。 ---- 家に帰ると、玲次はもう帰宅していた。 「玲次、ただいま。」 「おかえり、日向。」 「お、おう…!」 玲次が部屋から出て来て、抱きつこうとしてくる。俺は反射的にそれを、避けた。 自分が臭そう…。 「ちょっと、…先、風呂入るな。」 「……あぁ、分かった。夕飯準備しとく。」 玲次に探る様に見つめられるが、結局玲次は何も言わずそのままキッチンに消えていった。俺は風呂に直行する。 「あぁーーー」 気持ちいい。じんわりとした温かい温水が、汚れを落としてくれる。手首を見ると跡がくっきりと残っていた。それを見ると、自然と苦虫を噛み潰したような顔になる。 「くそっ………くそっ…」 これで良いのか。合ってるのか。 俺は1人風呂場でごちた。 …風呂をあがって、玲次に会うのが辛い。 食後ソファでぼんやりテレビを観ていると玲次が隣に座った。 「…日向、長袖暑くないか?」 「いやー、なんか寒くて。」 「ふーん。」 玲次がじっとこちらを見つめて相槌をうつ。俺は努めて平静を装うが、動きにぎこちなさが出ていないか気が気でない。玲次は徐に俺の体に腕を回して抱き寄せた。 「日向、寒いのか?それなら今日も一緒に寝るか?」 玲次はそう言って、俺の手を掴んだ。俺より一回り大きい玲次の手が、俺の手をすっぽりと包む。そしてするりと、親指の腹で手首を撫でた。温かくて、安心してしまう。自分の中で揺らぎが生まれた。 こう言う関係になって、良く一緒に寝てる。ただ寝るだけの時もあるけど、半ばそれはやるって合図でもあった。俺は中々自分からこの手の事を切り出せない。だから、いつもなら嬉しい申し出だった。 「……うん。寒いんだ。けど、今日は、ごめん、1人で寝る。もし風邪だったら、玲次にうつしても悪いし、今日はゆっくりする。」 流石にケツがもたん!……あと、浮気の跡がバレないか、心配だ。完璧、浮気だよな…。 「そうか…。体大丈夫か?」  「うん。ありがとう。」 「……」 玲次は相変わらず俺を見つめる。玲次は勘が人よりかなり鋭いから、バレるんじゃないか。玲次の言葉全てに嘘をついている。その自覚があった。 行為中に冬夜に言った「好き」って言葉を思いだし、気持ちに暗い影を落とす。バレたら、玲次とは終わっちゃうのかな…。 「日向、今日は遅かったな。仕事?」 「うん。仕事だった。ハードだったんだ…。疲れた。」 「そうか。」 思わず、玲次に泣き付きたくなる。でも泣きついて、どうするんだ。俺はぐっと堪えた。 「………」 「…………」 2人で黙り込む。2人でテレビを観ている体だけど、極度の緊張で見ているはずのテレビの音が聞こえない。玲次が相変わらず指の腹でゆるゆると俺の手首を撫でた。縄の跡に気づかれないか…気が気でない。 「日向、何か……隠してる?」 「うん?いや、何もないよ。」 流石にどきりとして、視線をテレビから玲次に移した。 「そう。何か俺に言えないことした?」 「え?いや、そんな事…してないよ。」 玲次が意地悪く笑って聞いてくる。俺は思わず、否定した。これも嘘なのに。 「…ふーん…。そう。…なるほど。」 「……。」 玲次は考えるように、視線をずらして相槌をうつ。俺は内心焦る。 「玲次、…玲次…!そんな…っ、俺っ、玲次の事、好きっ!好きっ、だから……っ」 「……」 俺は縋り付くように、玲次に抱きついた。半ば玲次に乗り上げ、キスをして玲次の首筋に顔を埋めた。そして玲次のがっしりした体格に見合った、しっかりとした首筋にキスを落とす。 「ははっ、日向、風邪をうつすとかさっきは言ってたのに、おかしいな。」 「んっ、」 俺が玲次の首筋から顔を上げ、再び唇にキスすると玲次が笑った。 「ふっ…っ、ごめん……。」 「ははっ、良いけど。」 俺は玲次にぎゅっと抱きついた。 ---- 深夜、玲次はそっと自分の部屋を出た。そして、静かに開けたのは、日向の部屋。 「………」 案の定、日向は爆睡して起きる気配は全くない。そっと手を伸ばし、日向の手首をみる。 「……ふぅん…」 日向の手首の跡を見て、玲次は小さく漏らす。足首も見てみると、手首同様に跡が付いている。 先程話した時の日向の表情、脈の上昇。軽い発汗。玲次は、先程の質問に対する日向の回答は大方嘘だったと考えていた。しかしその割に、日向は玲次の反応をチラチラと気にしていた。罪悪感。そして日向の手首と足の拘束の跡。日向が衝動的で軽率な行為をしたと言うには、その行為に日向に合意の意志はないようだ。極め付けに、あんな、懺悔する様なキス。 「……日向、昼はクロに戻ったんだな………。」 玲次は暗い部屋でボソリと呟いた。

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