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第31話
「やめろっ、馬鹿っ…!」
「はぁっ、クロ〜、無理、好き好きっ〜〜」
玲次と会って家に戻ると、廊下で柊にクロが襲われていた。柊がクロを壁際へ押さえ込み、後ろから手を這わせている。クロは恐らく必死に抵抗しているんだろうが、それは獲物を弄び痛ぶる事を偏愛する柊を楽しませるだけだ。
今日はクロを休ませると言ったはずだが、この様だ。ため息が出た。見るとトイレのドアが壊されている。クロがトイレに逃げ込んだところを、柊が強引に引っ張り出したんだろう。
「クロっ、可愛い」
「やだって…!」
柊の手が下半身に向かうと、クロは更に切羽詰まった声をあげた。
「柊、やめろ」
「!……煌…。もー、クロが無駄に抵抗するから、煌帰って来ちゃったじゃん…。」
俺は2人に近づき、クロから柊を引き剥がす。柊は不満げな目を俺に向けた。その目にはクロに向ける物とは明らかに違い、物騒な光を帯びている。
(確かに、こいつとは一悶着あるかも知れない。)
冬夜には社会の常識が通用する。だからある程度はコントロール出来る。しかし柊はどうだろう…?元々狼は社会のはみ出し者で、常識の範囲外で暮らしている。表は獅子が、裏は狼がそれぞれ統治している様なものだ。だから狼にとって、獅子も何も関係ないのだろう。
「クロ、次はちゃんと最後までしてあげるね。」
「……っ、死ねっ!馬鹿犬っ!!」
柊は先程から雰囲気を一転させ、甘えた様にクロに言葉を投げかけた。柊の言葉に、クロが虚勢を張る。柊はそんなクロを笑いながら、リビングに引っ込んで行った。
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「え!!本当に?!」
俺は思わず嬉しさで声を上げた。ニヤけ顔を自制できない…!煌が俺のテンションにムッとした顔をした。これでは煌に怒られてしまう……。しかし、なんと!煌は此処から、煌達のマンションから俺を出してくれるらしいっ!
「あぁ。ただ、呼ばれたら直ぐに来い。」
「…え、う、うん……。」
やっぱり裏があったか…。嫌だ。呼ばれたらって…行ったら性処理に使われるんだろ?出張……サービス……。俺はデリヘルかよ…。まぁ、此処から出れりゃ、もう何でもいいか。後は雲隠れでも何でもすれば良い。
「お前が来なかったら、鬼塚玲次のところに行く。」
「え?」
俺の心を見透かしたかの様に、煌が続けた。俺は僅かに動揺する。てか、煌、玲次の家とか知らないだろ…。
「アイツの居場所なら知っている。」
「!!」
煌は玲次の名刺をぺらりと俺に見せた。まじか…。一体どこでこんなものを。家の住所よりも、ある意味ヘビーな情報持ってるじゃないか。
「逃げるなよ。」
「うっ……わ、分かりました…。」
煌がいっそう語気を強め、俺は渋々頷く。そうだ。此処で煌の機嫌を損ねるわけにはいかない。
「………」
「………」
あ、お…終わった?煌はそれ以上なにも言わない。ならさっさとこの家を出たい。じゃないと…。
「あの……じゃぁ、俺はこれで失礼しまー」
「クロっ!!」
「あだっっ」
あぁ!やっぱり…。逃げ遅れた…。
俺がそろりとこの家を出ようとした所で、部屋に急に入って来た柊に飛びかかられその場に転けた。
「あっ、ちょっ、なに?もう、…あっ、開放って…!」
「リリース&キャッチ♡てか、出て行くのは俺らと遊んだ後だからねー。」
冬夜がにこにこと俺の服を脱がしながら話す。
やっぱり、最後までお前らはそうなのか。でも先が見えるとかなり気持ちの持ちようが違う。これが終わったら暫しの自由だ!……玲次にも…会える…。
「んっ、あ」
いや、なんか…こんな事しながら玲次の事考えたくない。無だ。頭の中を空にするんだ、俺。
「クロっ、本当、美味しそう……」
「っ、それ、やめろっ……っ、」
素数でも数えようかなと考えていたところ、急にガプリと、俺のものに柊がかぶりつく。急所を噛まれると、怖くて気持ちよくて、兎に角ぞわぞわとした感覚が止まらなくなるから嫌だ。それに柊は犬歯が鋭い。それがまた恐怖心を煽る。
「え、じゃー、俺は上〜。んんっ、やばっ!クロってば、本当にやらしい香り…」
「んんっ、」
冬夜も熱に浮かされた様に俺に口づけ、胸に手を伸ばしてくる。冬夜は舌が長い。その舌が無遠慮に、我が物顔で俺の口の中で動く。
「ねっ、クロ、俺にもご奉仕♡」
「え、……あっ、」
口を離した冬夜が嫌な笑顔を見せたかと思うと、体を持ち上げられ、そのまま座った冬夜の上に乗せられる。ずぶずぶと、冬夜のものが俺の中に侵入してくる。
あっ、だ、…っ。
おざなりに解かされただけなのに、すんなり入るのが悲しい…。
「ほら、クロ〜!早く動いてよ〜。」
「んんっ、あ、〜〜っ!や、し、柊、やめて…」
冬夜は動けと急かすが、依然として柊が俺に纏わり付く。俺の胸を指で弄び、首から耳をべろりと舐められる。敏感なとこばかり攻められ、動くに動けない。
「なに、柊に気を取られるの?俺としてるのになぁ〜。もー。」
「あっ、うっ、やぁっっ、」
結局そのまま、冬夜は俺の腰を掴むと無理矢理ガツガツと動かす。俺はぐらりと冬夜に倒れそうになるが、ぐらついた体を柊に引かれた。
「ははっ、支えてくれんの?」
「冬夜、早く終われ。」
「え〜〜。この前のお預け分もじっくり味わいたいし〜。」
「やっ、〜〜っっ!と、や…っ、やめっっ!!」
柊と冬夜が言い合うが、俺はそれどころでない。冬夜は俺が達すると嬉しそうに目を細め、舌舐めずりしながら更に攻め立てて来る。本当に根性悪だ…。柊は柊で、後ろからしつこく俺の体を弄ってくる。
「うぅっ」
「はぁ…、クロ、美味しい。ホント、食べちゃいたい…。」
「ひっ、…っ!!うぅ…っ」
ぐちゃりと舐め、カプカプと耳を噛まれる。柊の犬歯で本当に肉を切り裂かれそうだ。体が震える。俺の怯えに興奮してか、柊は更にカリカリと乳首も刺激してくる。俺は体を強引に柊に引かれ、糸が絡まった操り人形の様に不安定に揺れた。自分の体なのに、動かせる部位がなく、快感の信号だけが脳に送られてくる。嫌だ、怖い。自分の体のコントロールを奪われるのが凄く恐ろしい。
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酷い有様だ。見るに耐えない。昔は耐えれていたが、鬼塚玲次にあったせいか、それはいつもよりも不安で不快な光景だ。
「煌」
臭いものに蓋をする。正にそれだ。クロと2人を残して部屋を出ようとした時、柊に呼び止められた。
「なんだ。」
「煌の家の、トイレのドアを壊した時、やっぱりお前が名簿泥棒かって、クロに言われた。」
「……なんだそれ。」
「なんだろ?」
そう言って柊も眉を寄せていた。ただ頭に浮かぶ奴がいる。
「…鬼塚玲次か。」
「アイツ、嫌い。」
「…そうだな。」
柊はそれだけ吐き捨てると、会話に興味をなくした様に部屋に戻って行く。
やはり、鬼塚玲次は叩けば埃が出るようだ。
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