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第35話
その日の夜、兄さんの家に行ったがやはり日向はまだ帰って来ていなかった。
「………日向、遅いね。」
「あぁ。圭人は先に食べてていい。」
兄さんはそう言って、ポチりとテレビをつけた。さっきから、全然食べていない。それなのに、酒だけくびくびと飲んでる。
「…兄さん、空きっ腹でワイン呑むのって、良くないよ〜。」
「そうだな。」
「スープだけでも飲んだらー?」
「あぁ。」
「……」
「……」
兄さんは上の空だった。テレビには日向が良くみるバラエティ番組が映っている。兄さんは普段ニュース以外は観ない。現に今も、兄さんは真顔でその番組を観ていて、全く楽しそうではない。
「日向、今なにしてんのかな…?」
「……」
テレビに向いていた双眼が、静かに俺を見据える。あ、やべ。無意識に聞いてしまった。
「知らない。」
「……。」
それだけ言うと、兄さんはまたテレビに目を移した。
嘘。さっきの目が物語ってる。
「…なんで、兄さんは日向を信じないの?」
「……」
無表情。いつもの無表情だ。
「日向は兄さんが好きなんだから、もういいじゃん。」
「……」
「……こんな事、しなくても。」
「…」
「俺は、兄さんにこんな事、して欲しくない。」
兄さんは何も答えない。長い沈黙だ。だけど、今ので俺が知っている事、もう気づいたんだろう。
「圭人…俺は、感情地図も知っているし、その内容も理解している。しかし本当の意味では、それらが府に落ちない。だから、信じられない。」
……。
兄さんはなんの感情ものせずに、つらつらと述べた。
確かに…。感情を理解させる。無い物を根拠に信頼させる。それはさしずめ、目に見えない物をあると信じさせるような事だ。
可能なのかな?
俺は言い淀む。
「日向が物理的にもどうしようもない所に堕ちないと、俺は安心出来ない。」
「………でも……信頼することも、愛情でしょ…。」
あぁ、全然、ダメ。何言ってんだ、俺。これでは堂々巡りだ。なんでかなぁ。いつもペラペラよく喋るって言われるのに、こんな時に上手い言葉が思い浮かばない。
「……」
兄さんは無表情のまま、俺を見つめた。その目に迷いが浮かぶ様にも見えるが…それはただの俺の願望かも知れない。
日向とは1年以上も一緒に過ごして、その気持ちは家族や兄弟に向けるものと同じレベルだ。どうにかしてあげたい。しかし俺は、動物の首を真っ正面からかき切れない。どこぞの王様でもない。普通で凡庸なんだ。そんな俺が、何処まで出来るんだろう。
それに
「もう、何なんだよ…。」
俺はぐしゃりと頭を抱え込んだ。
それに、兄さんにも、踏み外して欲しくない。もうある意味では一線を超えているんだけど、これ以上、汚れないで欲しい。日向と、普通に幸せになって欲しいのに。
「………」
兄さんは相変わらずいつもの無表情だ。ただ、その目は俺を見つめていた。
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「んん゛っ、〜〜〜っ!!」
「はっ、…っ、はー、クロ、本当、生ける媚薬だな!ははっ」
冬夜が俺の中で果てて、冬夜の上に乗せられていた俺を抱き寄せキスをした。そして、酷く失礼なラベリングを俺にして笑う。
「はぁっ、はぁっ、」
「じゃぁ、休憩〜」
「んっ、…はぁーー…」
やっとか…。煌、柊、冬夜、しつこく付き合わされて、長かった…。冬夜がずるりと俺の中から自身を抜いた。
ふと見れば、外の雨はもう止んでいる。圭人が帰ってしまう前に帰れるかな。
「じゃ、クロ〜」
「え、ちょっ、やっ……むりっ!もう、無理だって…!」
待ってましたとばかりに手を伸ばしてくる柊から逃げる様に、俺は冬夜にしがみつく。
「ふっ、クロ…。」
「と、冬夜……!」
そんな俺に冬夜が笑いかける。その笑顔は優しく恋人に向けるようや笑顔。冬夜はぐっと俺の体を引く。良かった、助けて、
「はいっ、柊。」
「んっ」
「え」
冬夜は俺の期待を打ち破り、俺の体を軽く持ち上げ柊に渡した。冬夜の顔を見れば何処となく恍惚とした顔をしていた。
「あー、ガッカリ、絶望、ってクロの顔良いわぁー。柊、譲る代わりに、クロの顔、こっちむけてやってね。」
「…変態」
「やだっ、やだやだ、…あっ、」
柊が暴れる俺に構わず、背面座位で俺に挿入する。
「ん゛、やっ、……はぁっ、もっ、むり゛っっっ!!」
「無理じゃないよ〜。はぁっ、クロ、こんな後キュンキュンなって、可愛い。」
「〜〜〜っ!そんなっ、な゛て、ない゛っっ!ふっっ!」
足を折り曲げたまま、腕も一纏めに、柊は人形の様に俺を抱え動かした。ガツガツと動かされ、俺の意に反して行為は激しさを増す。
きつ、きつい…!なんでこの馬鹿犬はこんなに体力があるんだ…。……馬鹿だから?
「やっ、やっ、あっっ、…っ〜〜〜!やっ、い゛っ、いってりゅってっっ!〜〜っっ!まって、と、まっでっっ!!」
「あはっ、イキ顔もかぁーい♡」
「ふっ、ぅっ…っ、〜〜っ!!み、見るな゛っっ!」
俺が大きくガクついても、柊は一向に緩む気配はない。目の前の変態は、頬杖をつきじっとそんな俺を見ながら歓声を上げた。手が使えないので、俺は顔を逸らしてその視線から逃げた。だってかなりの至近距離でガン見されて、妙な羞恥心があった。
「あ、そうだ、そうだ。俺が休憩中にクロにあげようと思ってたやつ。」
「ひっ、」
ぬぽっ
更に最悪。冬夜は何処からともなく取り出した性玩具を、嫌な音と共に俺自身に付ける。俺は思わず、小さく悲鳴を上げた。
「何それー?オナホ?」
「んっ」
「ふふっ、良いでしょ?」
柊も動きを止め、ひょっこりと俺の後ろから顔を覗かせて覗き込んでくる。冬夜が自慢げに鼻を鳴らした。ていうか、俺のものを勝手に皆でじろじろ見るなっ!触るなっ!
「クロも、たまには使いたいよね〜?こっち。」
「うわっ、あっ、やだっ!やっ、やっ、」
そう言って、冬夜はガシュガシュと俺のものを抜きあげた。冬夜の事だから、無駄に凝ったつくりなんだろう。ドロドロと絡みつく内壁が過ぎる快感をもたらす。散々出し尽くした俺にとってはキツイ程で、俺は必死に玩具から逃げようと腰を引いた。
「ふっ、クロから擦り寄ってくるなんて……はぁっ、可愛い…。」
「あっ、ばっ、……ちがっっ!んんっっ!!〜〜〜っ!」
それを柊がすり寄って来てなどほざいて、また動きを再開する。前にも後ろにも逃げられない快感で、ずっと止まらない。脳味噌までドロドロと溶けて、流れでそうな快感だった。気持ち良すぎて、頭がキィィンと痛い。
「あっ、やめっ、あっ、あっ、…っ、んっ、〜っ!んん゛っ!」
「やめてあーげない♡ほらほらっ、」
「はぁっ、はぁっ、クロの腰、グリグリくるの、気持ちぃ…。はぁっ、クロ…全部、全部好きぃ…。」
「やだっ、あ゛っ、に゛ゃっっ、〜〜っっ!あっ、…っっ!」
俺はもう意味が無い言葉を垂れ流して喘いだ。冬夜は楽しそうに、尚もしつこく俺の逃げる腰を刺激する。柊がべろりと俺の背を舐めた。
前後からの違う刺激が、俺を捕らえ逃してくれない。
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