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第38話

全部手に入れた。同時に全て無くした気もした。複雑な感情で分からない。でも信じる事が出来ないなら、こうする事は間違っていないはずだ。どちらにしろ、もう何を考えても後の祭りだ。 良かったんだ。これで良かった。 「ふっ、」 「日向……気持ちいい?」 「うんっ、〜〜っっ!んんっ!!」 日向が俺の上でくたりと倒れた。 「日向。」 「うっ、」 一度日向に入れていたものを抜き、日向をベットベッドによりかけて深めに座らせた。 「あ、」 そして日向の足を抱え直し、また覆いかぶさる様にして貫く。そしてきつめに攻めた。 「あ゛、に゛っ、ふっっ!〜〜っ!!」 「日向、気持ちいい時はなんで言うんだ?」 「あっ、やっっ、やめっ、んっ、〜〜っ!ふっ、」 何か無くしたなと思うのは今みたいな時。前は気持ちいいって自ら言っていたのに、最近は自主性がない。 日向の体が逃げ場のない場所で逃げ惑う。しかしそれを無視して、ベッドヘッドに手をつき、もう片方手で日向を押さえ込み、押し潰すように攻め立てた。 「なんて?」 「あぅっ、きっ、気持ちぃっ、あ、い、いいっっ!!きもちっ、だっ、〜〜っ!い、出るっ!!」 低く威圧的に聞くと、日向が慌てて答える。 「ははっ、そうだよなぁ?」 「ん゛〜〜〜っっ!」 日向の足に力が入り、ガクガクと痙攣して閉じようとするが、その足を無理矢理割開き更にガツガツと律動を強める。 「やっ、まっ、でてるっからっっ!っ〜〜っっ!」 「ふっ」 あー、気持ちいいな。 日向の逃げうつ体を無理矢理支配下に置いて、攻め立てるのは気分もいい。精神的に興奮するせいか、感じる快感も増す。   綺麗に治らない現状に不満はあるが、考えるだけ無駄だ。最初からこうやれば良かったんだ。まどろっこしい。日向の父親の話も聞き出した。煌にも、もう用はない。 日向の口がはくりと開くので、ガブリとキスをした。 「はっ、日向、いい子。」 日向の中に出すと、俺は優しく微笑んで日向をふわりと抱きしめた。そんな俺を見て、日向の体から力が抜けるのが分かり口角が上がる。 ヒートをちゃんと誘発させたいしな。そもそも飴と鞭は基本だ。 ゆっくり、じっくり、確実に。侵食すればいい。 ---- 結局俺は、玲次を選んだ。 こんなのおかしいのに、抵抗出来なかった。それに、まだ何処かで玲次を信じたい気持ちがあった。だって、現に今も優しい。玲次は優しい。ただ前よりも怖い。どれが嘘で本当か、よく分からない。 「日向」 「…」 ま、まず…抜いてくれないかな…。 数時間行為を強要され激しくイった後で、動くと体がふるふると痙攣してしまう。それを知られたくないのに、玲次は抜いてくれない。そのまま話しかけられた。 「あれ以来日向もいい子だったし、日向の希望通り今週末は圭人を夕飯に呼ぼうか?」 「う、ん。……あの…、れ、玲次…」 「ん?なんだ?」 俺がおずおずと話しかけると、玲次がにっこりと笑いながら聞いてくれた。 「ちよっと…もう、ぬ……抜いてもらっていい?」 恥ずかしい。目線を逸らし、俺は遠慮がちに話した。 「…………」 しかし玲次は何も言わなかった。 どうしたんだ? 「………っ!」 そっと見上げた玲次は、先程まで優しく笑っていたのに、今は怖いほどに無表情で俺を見下ろしていた。思わず体がびくりと強張る。 「………ははっ、」 「あっ、れ、玲次……っ!?も、…っっ、あっ、やめっっ!」 玲次は乾いた笑いを浮かべた後、強引に俺を引きずって寝かせ、正常位で再び動き出した。 え、またやるの!?これまで、数時間やったから、今日はもう免罪符を得た気持ちだった。俺はシーツの上で逃げ場もないのに、慌ててもがいた。 「うぅっ、」 直ぐにゾクゾクと湧き上がる快感がきつい。 ……もう、嫌だ。 思わず俺の顔が苦痛で歪むと、それを眺めていた玲次がふっと笑った。また強引なキスをされる。 「ははっ、そうか。まだまだだったな。」 「あ゛っ、んん゛っ!〜〜〜〜〜っ!!」 玲次が何かポツリと呟いた。 ----- 「おじゃまーしまーす〜〜。」 「圭人、久しぶり!」 圭人の明るく何処となく緩い声が玄関からして、俺はそちらへ走り寄った。 「ははっ、熱烈歓迎〜。」 圭人がそんな俺をカラカラと笑った。 「ご飯、玲次が作ってくれたよ。」 「そっかー、楽しみ。そういや、日向、体調大丈夫なの?」 「うん。今のところ調子良いよ!」 俺は今仕事を休んでおり、それはヒートがきそうだからと言うことになっていた。本当は圭人に色々ぶちまけて、相談したい。だからそんな事は嘘だと言いたかったけど…。 「圭人、遅かったな。残業か?」 「まぁね〜。職員会議ー。」 玲次が直ぐそばにいる。出来たら何とか玲次と圭人を引き離して、圭人に相談したい。 「兄さん、何作ったの?良い匂い〜。」 「さばの味噌だ。」 「またー、日向の好きなやつかぁ。ラブラブだね〜。」 「ははは……」 ラブラブ…。 玲次は俺の好きなものを作ってくれる。普段は優しい。しかしこの圭人の軽口がしっくりこない。その理由は明確なのに、ここで何をしているんだろう。俺は名残惜しくなって、チラリと玄関のドアを見た。 ---- 「で、日向の代わりで来てるおじいちゃん用務員がさー、しゃんとしろって煩くて〜。」 「お前は本当にもっとちゃんとしろ。」 「えーーっ!」 「あはははっ」 圭人と玲次が話しているのを、俺はワインを飲みながら聞いていた。玲次も結構呑んでいた。頃合いを図る。 「日向、まだ呑むか?」 「うん。ありがとう。」 俺は玲次にグラスと差し出す。 「あっ、」 「…っっっ!」 俺がよろけて、玲次の足にベシャリとワインが溢した。

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