42 / 43
第38話
全部手に入れた。同時に全て無くした気もした。複雑な感情で分からない。でも信じる事が出来ないなら、こうする事は間違っていないはずだ。どちらにしろ、もう何を考えても後の祭りだ。
良かったんだ。これで良かった。
「ふっ、」
「日向……気持ちいい?」
「うんっ、〜〜っっ!んんっ!!」
日向が俺の上でくたりと倒れた。
「日向。」
「うっ、」
一度日向に入れていたものを抜き、日向をベットベッドによりかけて深めに座らせた。
「あ、」
そして日向の足を抱え直し、また覆いかぶさる様にして貫く。そしてきつめに攻めた。
「あ゛、に゛っ、ふっっ!〜〜っ!!」
「日向、気持ちいい時はなんで言うんだ?」
「あっ、やっっ、やめっ、んっ、〜〜っ!ふっ、」
何か無くしたなと思うのは今みたいな時。前は気持ちいいって自ら言っていたのに、最近は自主性がない。
日向の体が逃げ場のない場所で逃げ惑う。しかしそれを無視して、ベッドヘッドに手をつき、もう片方手で日向を押さえ込み、押し潰すように攻め立てた。
「なんて?」
「あぅっ、きっ、気持ちぃっ、あ、い、いいっっ!!きもちっ、だっ、〜〜っ!い、出るっ!!」
低く威圧的に聞くと、日向が慌てて答える。
「ははっ、そうだよなぁ?」
「ん゛〜〜〜っっ!」
日向の足に力が入り、ガクガクと痙攣して閉じようとするが、その足を無理矢理割開き更にガツガツと律動を強める。
「やっ、まっ、でてるっからっっ!っ〜〜っっ!」
「ふっ」
あー、気持ちいいな。
日向の逃げうつ体を無理矢理支配下に置いて、攻め立てるのは気分もいい。精神的に興奮するせいか、感じる快感も増す。
綺麗に治らない現状に不満はあるが、考えるだけ無駄だ。最初からこうやれば良かったんだ。まどろっこしい。日向の父親の話も聞き出した。煌にも、もう用はない。
日向の口がはくりと開くので、ガブリとキスをした。
「はっ、日向、いい子。」
日向の中に出すと、俺は優しく微笑んで日向をふわりと抱きしめた。そんな俺を見て、日向の体から力が抜けるのが分かり口角が上がる。
ヒートをちゃんと誘発させたいしな。そもそも飴と鞭は基本だ。
ゆっくり、じっくり、確実に。侵食すればいい。
----
結局俺は、玲次を選んだ。
こんなのおかしいのに、抵抗出来なかった。それに、まだ何処かで玲次を信じたい気持ちがあった。だって、現に今も優しい。玲次は優しい。ただ前よりも怖い。どれが嘘で本当か、よく分からない。
「日向」
「…」
ま、まず…抜いてくれないかな…。
数時間行為を強要され激しくイった後で、動くと体がふるふると痙攣してしまう。それを知られたくないのに、玲次は抜いてくれない。そのまま話しかけられた。
「あれ以来日向もいい子だったし、日向の希望通り今週末は圭人を夕飯に呼ぼうか?」
「う、ん。……あの…、れ、玲次…」
「ん?なんだ?」
俺がおずおずと話しかけると、玲次がにっこりと笑いながら聞いてくれた。
「ちよっと…もう、ぬ……抜いてもらっていい?」
恥ずかしい。目線を逸らし、俺は遠慮がちに話した。
「…………」
しかし玲次は何も言わなかった。
どうしたんだ?
「………っ!」
そっと見上げた玲次は、先程まで優しく笑っていたのに、今は怖いほどに無表情で俺を見下ろしていた。思わず体がびくりと強張る。
「………ははっ、」
「あっ、れ、玲次……っ!?も、…っっ、あっ、やめっっ!」
玲次は乾いた笑いを浮かべた後、強引に俺を引きずって寝かせ、正常位で再び動き出した。
え、またやるの!?これまで、数時間やったから、今日はもう免罪符を得た気持ちだった。俺はシーツの上で逃げ場もないのに、慌ててもがいた。
「うぅっ、」
直ぐにゾクゾクと湧き上がる快感がきつい。
……もう、嫌だ。
思わず俺の顔が苦痛で歪むと、それを眺めていた玲次がふっと笑った。また強引なキスをされる。
「ははっ、そうか。まだまだだったな。」
「あ゛っ、んん゛っ!〜〜〜〜〜っ!!」
玲次が何かポツリと呟いた。
-----
「おじゃまーしまーす〜〜。」
「圭人、久しぶり!」
圭人の明るく何処となく緩い声が玄関からして、俺はそちらへ走り寄った。
「ははっ、熱烈歓迎〜。」
圭人がそんな俺をカラカラと笑った。
「ご飯、玲次が作ってくれたよ。」
「そっかー、楽しみ。そういや、日向、体調大丈夫なの?」
「うん。今のところ調子良いよ!」
俺は今仕事を休んでおり、それはヒートがきそうだからと言うことになっていた。本当は圭人に色々ぶちまけて、相談したい。だからそんな事は嘘だと言いたかったけど…。
「圭人、遅かったな。残業か?」
「まぁね〜。職員会議ー。」
玲次が直ぐそばにいる。出来たら何とか玲次と圭人を引き離して、圭人に相談したい。
「兄さん、何作ったの?良い匂い〜。」
「さばの味噌だ。」
「またー、日向の好きなやつかぁ。ラブラブだね〜。」
「ははは……」
ラブラブ…。
玲次は俺の好きなものを作ってくれる。普段は優しい。しかしこの圭人の軽口がしっくりこない。その理由は明確なのに、ここで何をしているんだろう。俺は名残惜しくなって、チラリと玄関のドアを見た。
----
「で、日向の代わりで来てるおじいちゃん用務員がさー、しゃんとしろって煩くて〜。」
「お前は本当にもっとちゃんとしろ。」
「えーーっ!」
「あはははっ」
圭人と玲次が話しているのを、俺はワインを飲みながら聞いていた。玲次も結構呑んでいた。頃合いを図る。
「日向、まだ呑むか?」
「うん。ありがとう。」
俺は玲次にグラスと差し出す。
「あっ、」
「…っっっ!」
俺がよろけて、玲次の足にベシャリとワインが溢した。
ともだちにシェアしよう!