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亜利馬、人生最高の1日・3
「え、あ、ありがとうございます……。で、でも何で……えっと、……」
嬉しさよりも驚きと動揺が勝り、何と反応したら良いのか分からない。普通の夜だったら手放しで喜んでいたけれど、何しろ今は撮影中──これでも仕事の真っ最中なのだ。
ケンさんに顔を向けると、楽しそうな悪戯っぽい笑みが返ってきた。
「大丈夫、撮ってるから続けてよ亜利馬くん!」
「あ、……!」
それで全てを察し、俺はブレイズの四人に向かって突進し勢い良くダイブした。何度騙されれば学ぶのか。やっぱりドッキリは苦手だ──けれど、こんなドッキリなら最高に嬉しい。
「亜利馬、おめでとう!」
「まだまだガキだけどな!」
「獅琉さん、潤歩さん……」
「プレゼント持ってきたぞ」
「……ケーキも」
「竜介さん、大雅……」
俺は四人に抱き付いたまま、顔を上げることができない。人間、予想外の嬉しいサプライズに遭遇すると勝手に涙が出てきてしまうものだ。
「め、……っちゃくちゃ嬉しいです……! ありがとうございます!」
それでも何とか顔を上げて笑顔を作ると、四つの手が俺の頭やほっぺたをぐりぐりと撫でてくれた。
「……という訳で! 今日は亜利馬のお誕生日会動画だよ!」
「えっ、こ、これも動画に?」
「ケーキのろうそく吹き消しプレイからだな!」
段ボールを開けた潤歩が、中からケーキの箱を取り出す。式典用かと思えるほどの、かなりデカいケーキ。五人とケンさんで食べてもまだまだ余りそうだ。
「お邪魔します~!」
その時玄関の方で声がして、向かう間もなく更にリビングに人が入ってきた。
「お、庵治 さん! 雄二さん!」
動画班の庵治さんと、ヘアメイク担当の雄二さん。インヘルでもラブラブのカップルとして知られている二人が、プレゼントらしき箱を抱えている。
「お、お二人もわざわざ来てくれたんですか?」
「僕達だけじゃないよ~」
相変わらずのチェシャ猫っぽい笑顔で庵治さんが言うと、二人の後ろからスーツに眼鏡の人が現れた。
「山野さんっ!」
「お疲れ、いや、おめでとうか。亜利馬」
狭い俺の部屋が、大好きな人達でいっぱいになる。
「二階堂さんや他のスタッフからも、バースデーカードを預かってきたぞ」
山野さんから受け取ったカードの束。嬉しくて目を潤ませていると、更に山野さんがケーキとは別の段ボールの箱を廊下から持ってきて俺に差し出した。
「こっちはファンからの手紙と、メールをプリントしたものだ」
「………」
もう駄目だ──堪えなきゃと思ったそばから、見るも無残なぐちゃぐちゃの顔になってしまう。
「それから、これも預かってきた」
山野さんがタブレットを開き、動画を再生させる。
「亜利馬、誕生日おめでとう」
「あ、有栖だ……」
画面に映し出された有栖と、その隣には助手の白太さん。
「本当は俺もパーティーに参加したかったけれど、今夜はどうしても外せない、俺にとって死活問題になる大事なデートのために行けません。なので、俺からの有難い言葉を亜利馬へのプレゼントとして贈ろうと思います」
「何だよ死活問題になるデートって」
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