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亜利馬、人生最高の1日・6

「亜利馬、これからもよろしくね」  深夜三時を過ぎたあたりでケンさん達が帰って、部屋にはブレイズのメンバーだけが残された。みんな仕事で疲れているのに、帰るのを名残惜しく思ってくれているのだ。 「はい。今日は本当にありがとうございました。俺、本当にこの会社に来て、ブレイズの一員になれて、感謝しかないです。今日だけじゃなくて、ずっとそう思ってたんです」  思っていても、なかなか気持ちを伝える機会はない。忙しかったり、照れ臭かったり、幸せが当たり前になり過ぎて忘れてしまったり。 「俺、みんなのこと大好き!」  笑顔でそれを言葉にしても、俺の頬にはぼろぼろと涙が伝っていた。 「俺も大好きだよ、亜利馬」 「……俺も」  獅琉と大雅が両側から俺を抱きしめ、頭を撫でてくれた。 「もちろん俺もだ」  後ろから竜介の大きな手が頭に乗る。 「………」  眉間に皺を寄せた潤歩が、更にみんなの手の上に自分の手を重ねて俺の頭を撫で回す。 「潤歩も言いなよ、ちゃんとさぁ?」 「……うるせえ。言わなくたって通じてる」  くすくすと笑いながら、獅琉が「前にさ」と切り出した。 「企画の一つで、『家族モノ』撮ったじゃん。竜介が父親で俺が母親、潤歩と大雅が兄貴で亜利馬が末っ子のやつ」  獅琉の言うそれは「FamilyGame@BLAZE」というタイトルで、前に俺達が自分で作った企画を通してもらったものだ。散々な目には遭ったけど、凄く楽しかったのを覚えている。 「あれって、俺の理想なんだよね。いつかみんながAV引退しても、ああやっていつまでも五人で暮らせたら最高に楽しいなって」 「獅琉さん……」 「みんなが良ければだけど、……実現できたらいいな」  ずっと俺が抱いていた思いを獅琉が言葉にしてくれて、耐えきれずまた涙が溢れそうになる。 「そりゃ構わねえけど、竜介の家に全員で厄介になるってことか?」  苦笑する潤歩に、「別に良いが?」と笑う竜介。 「うーん。確かに竜介が頑張って建てた家に俺達が転がり込むってのは、申し訳ないね。……そしたら、俺はもう一戸別荘を建てるよ!」 「は? 何言ってんだ獅琉」 「……じゃあ俺は、みんなの引退後の仕事のために保護猫カフェ作る」 「いいね大雅! じゃあ俺は、大雅と竜介さんの邪魔にならない時用の家を近場に建てるよ!」 「……邪魔にならない時用って、何? 亜利馬……」 「あ、ええと……まあまあ、うん……」 「潤歩は何を建てるんだ?」 「はぁ? ……んー、じゃあ俺は……スタジオでも建てっか。色んな会社が使うから、寝てても金は入ってくる」 「決まり!」  途方もない道のりだけど、きっと五人の力が一つになれば何だって叶えられる。  この先もずっと、俺達は一緒だ。 「……という訳で、亜利馬」 「はい?」  獅琉が俺の頬に残った涙の跡を指で拭い、言った。 「俺達の絆も今一度固まったことだし、十九歳になったばかりの亜利馬を家族で『お祝い』しないとね」 「……へ? も、もう充分お祝いしてもらいましたけど。獅琉さんはティーセット、竜介さんからはライダースジャケット、大雅はお風呂でも見れるタブレット、潤歩さんからはお揃いのブレスレットで……」  闇鍋袋だから他にも招き猫とかホットケーキの粉とか、紐パンツとかカップラーメンとか色々貰ったけれど…… 「それは『物』だよね。『愛』はまだあげてないよ?」  俺を見る四人の目が、いつもの例のアレになっている。 「あ、愛も籠ってましたから大丈夫です! ティーセットもジャケットにも、タブレットもブレスレットにも全部愛が……」 「トットトットうるせえぞ、亜利馬アァ!」 「ぎゃあぁぁ──ッ!」

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