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亜利馬、人生最高の1日・7
結局いつもこうなんだ。みんなが帰った後でブレイズメンバーだけが残った時から、薄々こんな予感はしていたんだ。
「だって、一つ大人になった亜利馬の『初めて』は家族が貰わないと!」
「えっ、じゃあこの先も、俺が毎年誕生日を迎えるたびに……?」
「当然だろうが。家族の特権だ」
「ははは、俺達の体力にもよるけどな!」
「……みんなの誕生日にも毎年、亜利馬を生贄に捧げないと」
「い、生贄って何? もうそれ愛じゃなくてただの儀式じゃん!」
問答無用で獅琉に抱き上げられ、片付けられたテーブルの上に乗せられる。まさに生贄台の上の子羊になった気分だ。
「はい、脱いで脱いでー」
すぽんすぽんと服が脱がされ放られて行く。あっという間に全裸にされた俺は、代わりに大雅がプレゼント袋に入れておいてくれたふりふりエプロンを装備させられた。
「な、何ですかこれっ?」
「せっかくだから使って行こうと思ってさ。家族モノって言ったら末っ子亜利馬も大好きだけど、『お嫁さん亜利馬』もいいなと思ってさ。嫁っていうよりは婿かな?」
「俺達全員のお婿さん……」
大雅が無表情で呟き、潤歩と竜介が「それだ」と同時に言った。
「むっ、婿は裸エプロンなんてしませんっ!」
「それは旦那様たちの趣味だから、仕方ないよね」
「ひゃっ、……!」
テーブルに身を乗り出した獅琉が、俺の後ろからエプロンの隙間に両手を突っ込み胸を揉んでくる。
「あー、この感じとか超好き。可愛くて最高」
分かってる。獅琉は別に女装フェチなのではなく、ただ単純に「ふりふり」とか「ふわふわ」などの「可愛いもの」が大好きなのだ。綺麗系のお兄さんなイメージで売っているから、普段はあまりそういう部分を見せないだけ。
「オラ、さっさと脚開け!」
「ぎゃっ!」
荒っぽい潤歩だけどそれは俺が相手だからだ。俺が潤歩を信頼していると分かっているからだ。誰に対しても文句の多い潤歩だけど、それが許されるのはちゃんと相手を見ているから。自分を無条件で信頼してくれる相手にしかしない意地悪なら、それはもう愛情と同じだと思う。
「亜利馬、似合ってるよ」
「う、嬉しくないって!」
大雅の笑顔はいつもちょっと唇を弛める程度のものだけど、こうやって笑うことすら無かった過去を乗り越えて俺と出会ってくれたんだと思うと、愛しくて堪らなくなる。誰とも喋らず一人耐えてきた大雅。彼が笑ってくれると、自分が笑う時以上に嬉しくなってしまう。
「花婿は、今夜は眠れそうにないな!」
「笑ってる場合じゃないですってばぁ!」
そんな大雅が竜介に惚れるのはごく自然のことだ。誰にでも優しくて、いつでも頼りになる竜介。どんな局面でも竜介がいるだけで安心できるって凄いことだと思う。ブレイズの中で一番ファン層の幅が広いのは俺達の自慢の兄貴・竜介なのだ。
俺も、そんな最強の四人に囲まれてぼんやりしているだけじゃない。彼らと共に成長していく俺は、ブレイズのナンバー5・亜利馬なのだから。
──って本当に今は、そんなこと考えてる場合じゃない!
「亜利馬、相変わらず感じやすいね」
「そ、そんな風に触るからじゃないですかぁっ……」
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