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衝突④

「ユウ」  不意に声がかけられた。今までなにも言わなかったのに。  返事をしようと思った游太であったが、その前に、ぴとりと奥へ熱いものが押し付けられた。  游太の体が固くなる。しかしその固まった体は、ふっとほどけた。 「ユウ、好きだ」  耳にそんな言葉が転がり込む。  その声は苦しそうだった。詰まったような声。  ぞくり、と游太の身の内に震えが生まれた。快感よりも、心が震える。  なにか言おうと思った瞬間に、ずぐっと熱いものが入ってきた。 「うぁ……! あっ、ん、……はっ……」  ぎゅうっとテーブルの端を掴んで衝撃に耐える。何度も受け入れてはいるけれど、はじめはやはりつらいから。  游太が落ちつくまで待ってくれることが多い弘樹であったが、今日は容赦なかった。すぐにナカのものを揺り動かされる。游太の腰を掴んで激しく打ち付けられた。 「あっ、まっ、……て! ヒロ、まっ、てぇ!」  流石に強すぎる衝撃と快感に息を切らしながら游太は訴えた。やめてもらえるはずはなかったけれど。 「無理……!」  言われた声は少し遠かった。近付いていた身を離されたらしい。距離を感じて心細くなってしまう。 「あんっ、は……あ! ん、ふ、ぁ……っ!」  それでも游太の体はすぐに快楽に慣れてそれを受け入れてしまった。ナカからも甘い感覚が湧き上がってくる。  声が甘ったるくなる。弘樹にも伝わっただろう。余計にがつがつと貪られる。  激しくされてももう快感しかなかった。  体は。  胸の内はどこか痛かったけれど。  お互いのことが好きなのに、噛み合っていない。  普段体を繋げれば、すべてが伝わったかのような気持ちになれるのに。今はかすりもしなかった。それが胸の中をすぅすぅさせる。  それでも体の快感が強すぎて、その気持ちを上回った。 「う、……あ、ヒロっ、もぅ……!」  じわじわと甘い絶頂感が這い上がってくるのを感じて、游太は訴えた。快感が迫ってくる。  弘樹も終わりが近いのが伝わってきた。荒い呼吸で夢中で腰を打ち付けてくるのも、ナカでびくびく震えるものも。  やがて游太の身の中で湧き上がってきた快感は、ナカの感じる場所への刺激で一気に弾けた。 「あぁっ、や、あぁ……っ!」  びく、びくっと体が跳ねて絶頂に達する。快感を逃がすように背中がしなった。  游太が達したことでナカも反応したのか。弘樹が低く呻く声が聞こえた。  イくのか、とぼんやりした意識で思った游太だったが、確かにナカのものは、びくびくっと震えた。  けれど唐突に、ずるっと引き抜かれる。身の内が喪失感にわなないたが、それよりも、びしゃっと尻にかかったあたたかいものに意識が捕らわれる。  外に出された、と理解して、一瞬よくわからなかった。  けれど少しして頭に浮かぶ。  こんなところでして、ゴムなどがあるはずもない。そのまま入れてしまったからせめて外に出してくれたということだ。  はぁ、はぁ、と再びくったりとテーブルに力を抜きながら、弘樹の気遣いが游太の心に染みていった。  嬉しいのだけど、嬉しさだけではいられない。酷くされたのは確かなのだから。それは体を傷つけられるということではなく、心情的な面で。  でもそれも多分これで終わりだ。はぁー、と游太のくちびるから長い吐息が零れた。 「ユウ」  ぐったりした游太の背中になにかが触れる。  大きくしっかりとした感触は、確かに弘樹。背中にくっつかれて、後頭部にすり寄られるのを感じた。まるで大型犬かなにかのようである。  その仕草と次の言葉に、游太ははっきり終わりを知った。 「ごめん、ユウ」

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