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お仕事終わり
しゅるっと首元にネクタイを通して締めていく。今日は『良い子』の設定だったので、きっちりめに締める。
脱ぎ捨てていた制服を拾って、身支度をする俺の体を視線が這う。絡みつくようないやらしい視線だ。それでもまだ『仕事』は終わっちゃいないので俺はそれに気付かないふりをする。
最後にブレザーを腕に通して、やっぱりきっちりボタンを留めた。これで完成。俺はベッドに腰かけていた男の横に、無邪気に腰かける。そっと腕に抱きついた。
「すっげー良かったよ。また逢ってね」
我ながら演技臭いと思ったのだけど、どうやら男は気にしなかったようだ。気にしないというか、こういう演技臭さ含めて楽しんでいるのかもしれない。そういうものだろう。援助交際なんて。コイビトの真似事。
「ああ。レオくんのこと気に入ったな」
「えー、本当に? じゃあ延長してくれる?」
調子に乗って言ったけれど男は首を振った。
「いや、今日は帰るよ。用があるからね」
「えー、残念」
まぁ本気じゃなかったけど。もう用は済んだし。もう一度妄想に入るにはちょっと面倒なのもある。それにこのあとバイトがあるし。健全なほうの。
「じゃ、これ」
「ありがとっ!」
明るい声で、にこっと笑って受け取る。渡されたのは、紙幣四枚。なかなか羽振りがいいやつみたいだ。最低三枚からって設定だけど、悪かない。
そこそこ良い妄想と、特に必要のない紙幣をくれた男へのサービス。
苦い味しかしない頬へキスしてやった。
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