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今夜のお仕事③

「はぁっ、あ、……や、ぁ……っ、あっ!」  今日はうしろからだった。好都合。  俺はうしろからが好き。  単純に男の体の構造上、うしろから入れられるのがラクというのもあるけど、一番の理由は当然。犯してくる男の顔を見なくて済むという点だ。  男の指がうしろを弄ってくる。どうもコイツはオトコノコを抱くのに慣れているようで、上手かった。カラダ的な意味でも上客だ。  まぁ、下手なら下手でもいいけど。  玲也は童貞だから下手ということになっていた。俺の頭の中では。  なのである意味そっちのほうが燃えるといえば燃えるのだった。  ちゃんとクリームを用意してきて、それを使ってくれたのでぐちゅぐちゅと卑猥な音がたつ。体の内側を弄られてぞくぞくした。  うしろもすっかり慣れたのでもうあんまり痛くない。だから玲也が俺を求めてきたとしても、体はそんなにつらくは……でも逆か。処女のほうがいいか。  でも残念ながらもう、二年近く前にバックヴァージンは散らしてしまったんだな。妄想と引き換えに。  悶々としつつうしろを慣らされて、「入れていい?」と訊かれる。 「ん、ちょうだい……ゴム、つけてね?」  受け入れる返事をしつつも釘はさす。そういう契約だ。  病気だけは怖かったから、ゴム無しは絶対に拒んでいたし、客に「ナマで」と渋られても話も上手い俺は、どうにか丸め込んでつけさせていた。 「ああ、ちゃんとするさ」  今日のコイツは大人しくつけてくれた。  やれやれ話がわかる。向こうも向こうで病気の心配はあるだろうしな。  粘膜から感染するのだ。タチ側だってリスクは同じこと。 「いくよ、レオくん……っ」  ちゃんとゴムの感触を感じたので安心して力を抜いたと同時。ずぐっと俺の身を太いものが貫いた。 「あ、あぁっ! お、おっき、ぃ……!」  声を上げる。あまり演技ではなかった。  実際に大きかった。それにキモチイイ。  犯されるのは好き。女の子を抱くよりは、玲也に近い行為だから。  本当はまるで近くなんてないことは、見ないふりをする。  すぐに、ぱん、ぱんと腰が打ち付けられはじめられた。  俺は意識してかわいく喘ぐ。 「あんっ、あん……きも、ちい……っはぁっ!」  こう喘げば玲也はどう思うかな。女の子みたいでかわいいと思ってくれるかな。女じゃなくてもいいやとか思ってくれるかな。そうだといい。  玲也、玲也。すき、俺のこと、だいて。  頭の中で何度も呼ぶうちに、本当のことになる気がした。  うしろから犯されているのだと。  玲也が俺のことを愛して抱いてくれているのだと。  うしろからは、はぁはぁと息遣いが聞こえてくる。名前はあまり呼ばれないので安心した。  ぎゅっと目をつぶる。爽やかな笑顔が浮かんだ。大好きな顔だ。 「はぁんっ、あ……っ、あんっ……いい、いいよぉ……!」  ぐりっと奥を突かれるととても気持ちいい。意識してうしろを締め付けてやる。こうしてやると気持ちいいようなので。 「うっ……レオくん……、イくよ……!」  もう偽の名前なんて耳に入らなかった。俺もイけるように快感に集中する。  そして、最後のひと押し。 『……璃緒。好きだ』  頭の中で、妄想の玲也に囁かれて。  脳だけで俺は絶頂に押し上げられた。 「あ、あぁーっ!!」  びく、びくっと体が跳ねた。ぴしゃっと精液がシーツに落ちる。 「う……っ!」  中で男のものもびくびくと跳ねた。ゴムのおかげでナカには入ってこない。  ほっとした。ちゃんとイッてくれたことと、ゴムをしたというのが本当のことだったことに。  はーっと力を抜く。いつのまにかシーツを握りしめていたようで、手がちょっと痛いことに気付いた。 「悦かったよ、レオくん……」 「ん……俺も、悦かった……」  今日の『悦かった』は本当だった。良い妄想ができた、という意味で。 「もっかい、する……?」  調子に乗っておねだりする。 「まだ足りないの? いやらしい子だなぁ」 「だってすげー悦かったから……ねぇ?」  うしろをきゅっと締め付ければ、男は簡単にそれを大きくした。  そしてまた突かれて俺はシーツを握りしめ、喘ぐ。手が痛いのにもお構いなしに。  つぶった目の奥に大好きな顔を思い描いて。  頭の中で玲也の名前を繰り返しながら。

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