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親友との『援交』④
すぼまりに指が触れて、それだけでぞくぞくっと悪寒と快感が混ざったような感覚が沸き起こった。身もぶるりと震えただろう。
玲也が俺の表情をうかがってきた気配がした。『敏感なんだな』と言ってきたのと同じ理由であることを祈るしかない。
感触を確かめるように、そっと撫でたり押されたりされる。
信じられなかった。玲也に穴を弄られているなど。
おまけに触るだけでなく、今からここに玲也のものを突っ込まれようとしているのだ。それだけで俺の体は疼いてきて待ちきれなくなってしまう。
咄嗟に「早く入れて」などと言ってしまうことだった。
なんとか飲み込んだけれど。そんなはしたないこと。
表情を見られているのだから、そこから伝わってしまわないことを願うばかりだ。
やがて玲也がごくりと唾を飲むのが聞こえた。俺が枕元に置いておいたローションを取って、手に出した。それを更に、指に取って。
つぷっと指が押し込まれて、さっきより強い悪寒と歓喜が身を襲った。
体の内側に触れられている。玲也の指で。それを突っ込まれて。
内壁を軽く擦られるだけで気持ちが良くてたまらなかった。押し殺してはいたけれど、すぐに息はあがってしまった。どくんどくんと跳ねる心臓が苦しくて、ついでに息をするのも苦しくて、俺は口元を覆ってなんとかそれに耐える。
おそるおそる、という様子で奥まで指が差し込まれた。さっき丁寧に洗浄したから汚れてはいないはずだけど、不安はある。
男の排泄器官になんて指を突っ込んで、不快に思われないかとか。当たり前かもしれないその不安。でも玲也が言ったのはまったく違うことだった。
「あったけ……」
感嘆するような声。不快の気持ちはまったく感じられなかった。
俺の心はたったそれだけのことに嬉しがってしまう。
「い、痛かったら、言えよ?」
気遣われていることにまた心が震えあがった。
ほんとうに、なんて幸せなのだろう。
抱いてもらえるだけじゃない。こんなに気遣って優しくしてもらって。
玲也がそういうヤツなのはわかっていたのに、本当はわかっていなかったのかもしれない。
いや、セックスの様子なんて知らなくても当然だけど。そもそも玲也は童貞だから、女の子やなんかにもこんな姿をさらしたことはないだろう。
だから俺はほかのやつが玲也のこんな様子を知らないという、そんな些細なことにもまた嬉しくなってしまうのだ。
「ん……っは、……う、っあ、はぁっ!」
弱い力で探られる。前立腺なんかの気持ちいいところになんてまだ触れられていなくて、単に内壁を擦られているだけなのに気持ちが良くてたまらない。
それは玲也の指だからにほかならなくて。まだ指で探られているだけなのに、甘い声が出てしまう。
さっきのように縋りたかった。けれど今度は手が届かないし、それに口元から手を離すのに不安感もあった。だから俺はただ身を震わせて甘い声をあげる。
玲也はどう思っているかはわからないが、とりあえず自分の施していることが間違いだとは受け取らなかったらしい。俺の様子を見ながらあちこち探りだした。
「えっと……いいところとか……あるんだよな?」
聞かれて顔が熱くなった。前立腺のことだろう。
けれどそれがどこかなんて言えやしないし、第一自分で場所はわかっていても、他人に「ここです」と言葉で伝えることはできないのだ。
そんなことを訊いてしまうあたりがやはり童貞全開なのであったけれど、そんなことマイナスでもなんでもない。むしろ玲也らしくてこの行為が現実なのだと身に染みてくる。
「もっと、おく……! っひぅ! ちが、」
ずぶっと一番奥まで沈められたけれどそこじゃない。それどころか刺激が強すぎてヘンな声があがってしまった。玲也はおろおろと俺を見た。
「わ、わり……」
「いい、から……っ、はや、く……」
説明できない以上、色々触って見つけてもらうしかない。
もどかしい。玲也の手を掴めれば誘導できるのにそんなことは物理的に無理だし、第一恥ずかしすぎる。
「う、……えっと……」
そろそろとあちこち探られる。触られて痛い場所はないけれど、もどかしさは高まった。
そのうちやっと、玲也の指が感じる場所をわずかにかすった。
そこだとか言うまでもなかった。俺の体は震えあがってしまったのだから。
「ひっ! あ……っ」
軽く擦られただけだというのに甘い感覚が一気に生まれる。
玲也は俺の反応に驚いたらしい。けれどその様子をはっきり知ることはできなかった。
「ここか……?」
ぐいっとそこを強く押し込まれてしまったのだから。
直接的な性感帯。おまけに性器と違って外から触られているのではなく、神経を直接触られたにも近い。
「ふぁっ! あ、あー!!」
目の前が真っ白になって、びくびくっと体が跳ねた。甘いどころではなく、苦痛にすら近い快感というにも生ぬるい感覚が弾けて耐える間もなく達してしまう。
ついさっき、前を触られてイッたときとどちらが強かったのかはわからなかった。玲也に触られればなんでも気持ちいい、なんて馬鹿のように単純だ。
かすんだ意識の中で、はぁ、はぁ、と息をつく。呼吸によってゆっくりと体も心も落ち着いてきた。
落ちつくと同時にいたたまれないほどの羞恥が襲ってきたけれど。
まだ挿入もされていないのに何回達するというのか。
体の反応は顕著だった。玲也の存在を悦んでしまっているのが明らかで。
でも玲也はそれに思い当たらないらしい。また、おろおろと言った。
「わ、わり……」
その鈍さが俺にとっては救いだった。そして玲也が比べる対象を知らないことも救いだった。それほどおかしいとは思われていないと……思いたい。
自分を安心させるような言い訳を頭の中で並べて、なんとか心を落ちつかせて。俺はねだる。
「も、いいから……い、入れ、て……」
言うのは恥ずかしかったけれど、はっきり言わなければ伝わらないだろう。よって、勇気を出して言った。
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