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再会

 今日までしてきたように、同じホテルの違う部屋を取ってもらった。  部屋番号を教えられて、俺はそこへ向かう。こんこん、とノックをしてすぐにドアは開いた。  そこで一瞬だけ不審に思った。大概の客がするように、チェーンで相手を確かめることも、名前を聞いて確認することもなく、いきなり大きく開いたのだから。  そしてそのドアの中を見て。  俺は絶句した。 「……久しぶり」  なんで、こいつが、ここに。  そこには玲也が立っていた。  久しぶり、なんてぬけぬけと言った割には、固い顔をしていた。  俺の頭は真っ白になった。  なんで、こいつがここに。そればかりが頭を回る。  いや、わかる。俺は『ハメられた』のだ。  普通の、男の子を探している客のフリをして玲也は俺を捕まえた。  もしかして、俺をずっと探していたのだろうか。  でも今はそれに歓喜なんて覚えられなかった。それどころではない。  なにを言われるのか。あるいは、なにをしにきたのか。客のフリまでして。 「色々あるけど、とりあえず、入って」  言われて俺の意識が少しだけ戻ってきた。  そうだ、こんな、ドアを開けっ放しでいるわけにはいかない。  俺も廊下に立ちつくしているわけにはいかない。不審に思われる。  しかし俺の頭は一気に違うほうへ振れた。部屋に入るなんてとんでもない。今更コイツと部屋に二人きりになんて。 「帰る!」  意外としっかり声は出た。真っ白だった意識は一瞬にしてクリアになり、それどころかぐつぐつ煮え立つ。怒り、と呼べる感情が腹から沸き起こってきた。 「なんで。約束したろ」  なのに玲也は顔をしかめて俺を見る。  こいつはこんなやつだったか?  俺はふっと、違和感を覚えた。 「騙したんだろ! んなの、反故だ!」  逢う約束なんて、『客』の正体が知れた時点で契約破棄だ。  言い放って、くるっときびすを返して床を蹴ろうとしたのに。  俺の腕に鈍い痛みが走った。走り出しかけていたので、俺は引っ張られてうしろに倒れそうになった。  しかし俺のうしろにいた存在によって捕まえられて、倒れることすら叶わなかった。玲也に腕を掴まれたのだ。引き留められたのだ。  理解して、驚愕に俺の足は止まってしまった。  そしてそれは俺の『敗北』だった。 「約束は守ってもらうからな」  低い据わった声で言われる。ぐっと俺の腕が掴まれた。再び鈍い痛みが走る。  意外なまでに強い力で俺は部屋に引きずり込まれた。  抵抗すらできない。状況に意識が追い付かなくて。  部屋に無理やり入れられて……背後でばたんと扉が閉まった。がちゃりとオートロックがかかる音も。

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