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璃緒の夜③

「そ、そっか……悪い」 「いいから。……早く」  ローションを絡めた玲也の指が、俺の奥に沈む。  気持ち良さにぞくぞくした。ナカを犯されることが快感でならない。 「ふぁ……っ、はっ、あ、う!」  かりっと前立腺を引っ掻かれて高い声が出た。前回知った場所を覚えられていたらしい。そういうところは馬鹿ではないのだ。  引っ掻かれるだけでなくそこを刺激されながら、ナカと入り口をほぐされていく。なにしろ好きなヤツにされているのだ。俺のそこはあっというまにとろけてしまっただろうけど。 「もう、いいかな」 「いい……、はや、く!」  玲也の言った声には期待が滲んでいた。だから俺はそれを後押しする。  今度こそ繋がれる。本当の意味で。 「ん」  一旦玲也は俺の上を離れた。俺が枕元に置いていたゴムに手を伸ばして、封を切る。まだもたもたとはしていたけれど、玲也はなんとか自分でゴムを付けたようだ。俺の脚をぐいっと持ち上げる。  前からするのは初めてだから、うまくできるだろうか、なんて俺は思ったのだけど、意外や。玲也は俺の脚の間に割り込むと、的確に入り口にそれを押し付けてきた。  それだけでなく、ちょっと息をついただけで、ぐいっと押し込んでくる。 「は、ぁ……っ、あ……!?」  なんで、前回はあんなだったのに。  思ったのは一瞬だったけれど、奥まで押し込んで、はぁ、と息をついて俺を見つめてきた玲也の目を見て理解した。  雄の本能だ。  動物は教えられなくたって、交尾の仕方を知っている。  玲也のコレも、きっとそれ。  二度目で、緊張感が薄らいだぶん、きちんと本能が働いたのだろう。  理解して、ぞくりとした。俺を食ってしまいそうな眼をしていたから。  そして事実、俺は食われてしまった。身も心も。 「璃緒……っ」  ぐいっと、俺の胸につきそうなほどもっと脚を持ち上げられる。  すぐに玲也が腰を振りはじめた。本能のままに、貪るように。 「あんっ、は、あぅ……、ちょ、ゆっくり、ぃ……!」  俺のほうがそんなことを言ってしまう始末だった。  背中に回している腕に力がこもる。玲也のシャツを強く握りしめた。そうしないと意識が飛んでしまいそうだったのだ。 「ムリ……!」  しかし玲也は容赦ない。がつがつと俺を貪る。  幸福感は確かにあったけれど、激しすぎて少しつらいくらいだった。拒否するつもりなんてないけれど。  むしろ俺を前にしてこうなってくれるのが嬉しくてならない。  雄の姿を見せてくれることが。  俺を食べたいと思ってくれていることが。 「う、……っ! ……はぁ……っ、璃緒、すげ……」  俺の気持ちのせいで、きゅうと入り口が締まったのだろう。玲也の息が一瞬詰まって、感嘆したように言ってまた抽挿がはじまる。俺はもうしがみついて甘い声をあげるしかない。  頭の中はふわふわしていた。気持ちが良くてならない。  体だけでなく、心が気持ちいい。締め付けられるような甘酸っぱさが満ちている。まるでいちごかなにかをかじったような、きゅんとする、それ。 「玲也、れい……や、ぁ……!」  幸せのままに名前を呼ぶ。  ああ、今は妄想なんてつまらないものじゃない。  現実だ。  そして今は口に出していいのだ。  実感してしまえば止まらなかった。  俺は馬鹿のように玲也、と繰り返して呼ぶ。ひとつ呼ぶたびに、甘さがどんどん膨れるようだった。そしてそれは限界に達する。 「れい、やぁ……もう、イく……!」  びくびくと腿が震える。きっと最高に気持ちいい。予感にぞくぞくした。 「んっ……俺、も……!」  言われて俺の背筋が震えた。同じように感じてくれていたのだ。  その嬉しさに最後のひと押しをされた。 「ひぁ、あぁーっ!」  びくびくっと身が跳ねて、玲也に縋りながら達していた。  精液を吐き出す快感だけでない。満たされた気持ちからくる快感が、一気に脳に回って貫いた。頭が真っ白に染まる。  不透明な意識の中で、玲也が呻く声が聞こえた。直後、ゴム越しのそれが俺のナカで跳ねる。  俺でイッてくれた。  その事実だけで、もう一度軽くイッてしまったらしい。  脳にもう一度甘い感覚が弾けて、俺の意識はしばらく戻ってこなかったのだから。  ふわふわとした心地良さの中で、声がかけられた。 「璃緒」  呼ばれた名前。  偽名なんかじゃない。俺の本当の名前。  今、抱かれたのは確かに『荻浦 璃緒』だった。

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