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第3話

「はあ、疲れた」 呟いても失態を無かったことにはできない。 ベッドの上でゴロゴロすることへの有難みをここまで感じたことがあるだろうか。 まだBのLの本は読み終わっていない。 一体何冊あんだよ。 オニババ真子が帰ってくるまでに読み終わってしまわなければいけないと思うと焦って集中できない。 しかし姉が帰ってきたのは深夜の12時を超えた頃だった。 「ただいまぁ゛...」 俺の部屋のドアを迷いなしに開けるデリカシーの無し、に加え鬼姉が心做しか泣いてるような気もする。 「酒くさ」 そう言うとまたボロボロと泣き始める。 うちの家系はあまり酒癖がいいほうでは無い、特に女性陣が、だ。 母も酒を飲むと泣き上戸になるし、母の姉のハヅキおばさんはよく絡んできて困ったものだった。おばあちゃんはもう懲りてやめたとしか言わない。よほど酒癖が悪かったのだろう。 そう思うと父は飲んだら直ぐに布団に行ってしまうので全然いい方だ。 「あんたまでぞんなごどいうの゛〜」 「誰に言われたんだよ...」 「そんなんだからぁ...あんたはぁ、、、一生総受けなのよ!!!!!!」 「はぁ?」 何言ってんだ。 「あんた、、、ほんとに漫画読んだのぉ???」 そう言うと紙袋から漫画を何冊か取りだし、ページを捲り始める。 「こことか、こことか、こっちとか、、」 あんたにそっくりじゃない、!なよなよしたとことか! というと、また泣き出し、こういうところが〜とかこんなところ〜とか色々語り始めてしまった。 「静ちゃんとか、、、まさにそうじゃない......あんたは恵まれてるのよ」 静の名前が出るとギクッしてしまう。 朝変な夢を見たせいか、罪悪感とは行かないもののあんな夢に出てきたことがショックだった。 「あと、、!あのぉーーーー、あのことか」 「いや誰」 「あのーーーツンデレ受けみたいな子、、前、家に来た、、ちょっと無愛想な、」 「光太郎?」 「そそそ!!!こうちゃんー!!あの子ほんとにいい子よね゛ぇ...」 あれのどこがいい子なんだ。 「いやいやいやいや、、俺が総受けってどこに関係があんだよ」 総受けってつまりアレだろ?BLで言えばハーレムの同性バージョンみたいなやつ、だったような気がする。 「周りみてわかんないの?可愛い子だらけじゃない!!!!」 そう言われると、野木本の顔が浮かんでくる。たしかにあいつは可愛いな、うん。 「あんたの、周りにはねぇ、はびこってくるのよ、、、、イケメンが!!!!このクソみたいなー!!!!!!!……………」 言葉が破茶滅茶、そして汚い。キモイ妄想してくれるな。 いや、関係ない!と言おうとしたところで腕を後ろから首に回され、夜通し総受けについてあーだこーだ説明されるのだった。 ___________________________________________ 結局一睡も出来ず、登校する羽目になってしまった。 ぼんやりと歩いている。 総受け、の一言が頭から離れない。 男子が周りの男子から好きだ好きだと迫られるのはそんなに楽しいのか?、体験したいわけではないが現実味がないので想像しようとしてしまう。 静...は、やっぱり素直で純粋でストレートな清楚キャラだよなぁ、思い浮かぶのは女子になった静。 アリだ。 次に光太郎。 考えたくもないが、まぁギリギリ女子として見るとツンデレというのはポテンシャルが高いのではないか、、、じゃあいじられキャラのツンデレ?好きな人だけにはツン対応ってことか。 え、俺?、いやいやいやないない。 まぁ、女子としてみればアリだ。 野木本は、満場一致で誰もが可愛いと言うだろう。男子の時でも癒し可愛いので女子になってしまったら堪らなく可愛いのだろう。 そしたら落ちてたな俺...。 アリだろう。 こうして見ると、俺は恵まれているんだなと思う。女子であったらの話だし。 どうみても男だ。 「はぁ...」 ため息をつき、前を見ると右斜めに光太郎がいた。 イヤホンをしているので丁度いい無視しよう。 話しかけたら機嫌を損ねそうだし上手く抜かして気付かれないようにしよう。 この前話しかけたらムスッと返されこちらの気分が悪くなった。 あくまで自然に、気づいてないフリをしながら遠巻きにして抜かそう、少し歩調を速めて歩く。 絶対に前しか見ないと決め、ぼんやり歩いてるように見せる。 スタスタと歩いていると、やっとスルーできた。そう思った時、背中を蹴られる。 「うおっ!、.........」 「おい、気づいてんだろ」 ぐるっと振り向けば不機嫌MAXな光太郎が俺を睨んでくる。 「イヤホンしてたし、声かけるの悪いと思って」 「あぁ?!」 またガシガシと靴の裏で背中を蹴られる。 とりあえず話しかけても話しかけなくても不機嫌にさせてしまうのは変わりがないということが分かった。 「はいはい...」 背中の汚れを適当に払いながら結局光太郎と一緒に投稿する羽目になった。

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