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 そこまで一気に話すと、ジェットコースターの如く止まらなくなった。   「でもそれが余計に惨めになっちゃって。気を遣わせてるんだな、俺は迷惑掛けてるんだろうなって思うと止まんなくて。上手くいかないもどかしさを、親に八つ当たりする事で発散してて」 「うん」 「家にいたら親と喧嘩になるから、休みの日は外に出るようにしたんです。隣の駅まで歩いてみたりとか、美術館とか浄土博物館とか適当に選んで入ってみたり。とにかく、その時にしたいって直感で思った通りに動いてみたら、ちょっとだけ気分が落ち着いて。ある日一人で電車に乗ってぼーっとしてる時に、あぁ、飽きたなって素直に思ったんです」 「飽きたって?」 「周りを馬鹿にするのとか、自分は迷惑かけてるんだなって落ち込むこととか。もっとちゃんとしたい、他人も自分ももっと大事にしたい。だから」 「そういう過去があったから、大稀くんは人間について詳しく学びたいんですね」  頷くと、陽向先生は眦を下げて柔和な笑みを浮かべた。  それを見て俺もホッとした。  隠していたわけではないが、自分の心の中を先生に少し見せることができて。 「話してくれて嬉しいですよ。すごいじゃないですか、自分でそうやって殻を破ったのは」 「いや……でも結局、いろんな人に迷惑掛けちゃって。その時俺と関わってくれてた人には嫌な思いさせて、悪いことしてたなって」 「他人に迷惑掛けない人なんて、この世にいませんよ。その時はその時で、大稀くんが出来ることを精一杯して気付けたのだから良かったんです。それにその時に大稀くんと関わっていた人が全員迷惑してたとは思わないです。現に大稀くんの言葉に救われた人がここにいるし」  はっとした俺は、陽向先生を見上げた。  四年前、俺はこの人と本当は何を喋ったのか。 「なんて言ったんですか、俺は」 「んー? ……秘密」 「待って、すんごく気になる」 「じゃあ、合格したら教えてあげるよ」 「……」 「あ、そんなにジト目で睨まないでくださいよ。でも、君の何気ない言葉に背中を押されたのは事実なんだ。あの時の大稀くんも好きでしたけど、今の大稀くんも大好きですよ」  はた、と見つめ合う。  二人の間に微妙な空気が流れた。  陽向先生はなんだか慌てて苦笑いをした。 「あぁ、まぁそういう意味じゃなくてね! とにかく、話してくれて良かった。僕を信頼してくれて、ありがとうございます」  分かってたけど、意味じゃないのか。  まぁいいか。  へへ、と笑うと、先生は頭を撫でてくれた。 「試験まであともう少しだね。一緒に頑張ろう」 「はい」  そういう意味じゃなくっても、俺は今めちゃくちゃ嬉しい。  面映くて、足が地についていない感覚だった。  駅前でお別れをした後、上がった熱を冷ますために少し遠回りをしながら帰路についた。  はやく大人になりたい。陽向先生と同じところに立ちたい。  絶対、合格しよう。  そしたら陽向先生に、自分のこの気持ちを伝えてみようかな。

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