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持ってきた野菜を切る作業をお願いされたので、包丁でザクザクとぶつ切りに切っていった。陽向も陽向で、向こうで違う仕事を任されている。
女の人二人と、俺ら以外の男の人たちでワイワイしているのを見て、久遠さんに切り出した。
「陽向って、付き合ってる人とかいるんですか?」
「今? どうだろう。そういう話は周りからも聞かないけど」
胸がドキッとする。
今、と訊いてきたということは、以前はいたということか。
「前はいたんですか?」
「うん、いたよ。年上の人」
「年上……」
「うん、その時陽向が一年生で、その彼女が四年生だったから三つ違いの。彼女が卒業してしばらくしたら別れてたから、価値観の違いでとか、そんなのじゃないかな。あんまりそういう話はしないから、風の噂でってやつだけど」
まさかこれは予想外だった。
陽向が付き合うとしたら年下の人だろうと踏んでいたのだ。
だって俺は陽向の三つ下。
それなのに陽向は、かつて三つ上の女性と付き合っていたなんて。
だから陽向って、たまに優柔不断というか、ここぞという時にオドオドしたり決定打に欠ける時があったりするんだろうか。
本当は自分についてこいタイプじゃなくて、相手にぐいぐい引っ張ってもらいたいタイプなんだろうか。
「気になるの?」
「えっ?」
「あいつの過去とか」
「あ、いえいえ。俺も、陽向のそういう話は全く訊かないのでどうなのかなぁって」
「そう。なんだかショック受けてたみたいだから」
気のせいですよ、と笑ってその場をやり過ごした。
まずいまずい、久遠さんは俺の少しの表情の変化を見逃さなかったみたいだ。
聞いて良かったような、良くなかったような複雑な心境のまま、バーベキューがスタートしてしまった。
着席すると、陽向は俺の隣に座っていた男の人をぐいぐいと横に押して無理やり入り込んできた。
「なんだよ陽向ぁー」とぶーぶー言われても陽向はそこを譲らなかったので、しぶしぶといった感じで男の人は横にずれていた。
「さっきの話、ちゃんと聞かせてもらいますからね」
「さっきの話って?」
「久遠と何話してたの」
なんだか怖い顔して尋ねる陽向を見ると、本当に年上の女性と付き合っていたのかと疑いたくなる。
「陽向がめっちゃ音痴だって話だよ」
「えっ。それでなんだかクスクス笑ってたの?」
「うんそう。その話で盛り上がってたの」
こんなに距離が近くて、もしも周りに付き合っていることを勘づかれたらどうしよう。
そんな思いから、ついつい邪険に対応してしまう。
それに加えて聞かされた、陽向の過去の恋愛話。さっき久遠さんにぽろっと尋ねなくて良かった。
――陽向って、その人とエッチしたのか知っていますか?
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