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第2話

 昨日の夜は、これで最後だからと言って、ジョアンが俺を放してくれなかった。何度も俺を求めた。  彼女の豊満な身体、嫌いでは無かったが、彼女とのセックスは俺にとってどちらかと言うと性欲処理をのためのスポーツのようなものだった気がする。 そんな俺の気持ちを彼女はわかっていたのかもしれない。だから、日本には愛する人がいて、その人を忘れられないでいると考えたのだろう。  ジョアン、でも俺、その人とは幸せになれないんだ。その人の為に帰るわけではないんだよ。そう言ってあげたかったが、もう遅すぎだ。  俺は人を幸せにすることが出来無いのかもしれない。相手を傷つけて去っていく、あの時だって――。  毛布を首の所まで引き上げ、目を閉じた。疲れた身体が俺をすぐに眠りに誘い込んだ。 「さよなら」  俺を見送りに来てくれた彼女にそう言った。彼女は悲しげに俺を見つめていた。 「タクト!」  背を向けて歩き出した俺に彼女の切なげな声が届いた。もう振り向くのはやめようと思った時、懐かしい名前が呼ばれた。 「タカト!」  彼女にホントの名前を教えていただろうか? 「タカト!」  もう一度その名前が聞こえた。振り向いて見ると、そこには俺の愛した人の姿が――。 「シュン…」  彼が俺のことを見つめながらこちらに向って歩き出した。  シュン、何でここにいるの?  毎日の生活に追われて、シュンの事を思い出す日も少なくなっていたのに。 「お帰り、タカト。会いたかった」  そう言うとシュンが俺の事を抱きしめた。暖かくて、懐かしいシュンの香りを思い出していた。会いたかった、胸が熱くなった。 「シュン、ダメじゃないか。あなたには…」 「何言ってるのさ、お前は俺の息子だろ? 何したって平気だよ。タカト、愛してる」 「え?」  驚いている俺に、シュンがキスしようとしていた。  ええ、息子? でも、息子の唇を奪おうっての? 「お客様、シートをお戻し下さい」  急に現実に引き戻された俺は、慌ててシートを元に戻した。そう言えばまだ飛行機は空港を出てはいなかったのだ。 離陸準備をしている飛行機の窓から外を見ながら、この地に別れを告げた。  そう、日本に帰ればシュンの姿をテレビで見る事になる。でも、もう大丈夫なはずだ。今では懐かしい思い出になっている。

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