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第19話

「やるなぁ、鷹人。あの人、お前の事すごく気に入ってたぞ」  進藤がニヤニヤしながら俺の方にやってきた。 「そう言われても」  ため息をついてからそう言うと、進藤が恐ろしいことを言った。 「ま、お前の電話番号教えてあるから、そのうち誘いがあるだろうな」 「はぁ? 何で? そんなプライベートな事、勝手に教えて良いと思ってるのかよ!!」  熱くなっている俺に向かって、進藤はニヤけた顔を向けたままだった。 「それは冗談。とりあえず俺に連絡来ると思うから。そしたら、知らせるよ」 「驚かすなよ…。だけど、俺、行かないから、進藤から断わってくれよ」  シュンが空港に来た時の話を聞いていた俺としては、もう面倒なことを起こしたくないという気持ちで一杯だった。 「あのな、そういうのは自分でやれ」 「何でお前ってそうなんだよ? シュンの仕事の事だってそうだし。お前、俺が困ってると楽しいのか?」  俺は思わずそんな事を聞いていた。何回か言ってきた言葉だし、答えは大体、想像出来ているのだが…。 「あぁ。楽しいね」 「くそっ! 悪魔」 「なぁ、それより、彼女って誰だよ?」  その後、進藤にさらにしつこく絡まれたけれど、ノックが聞こえたのであまり詳しい話にならずにすんだ。  それにしても、サチは本気なのだろうか? 進藤の所に来てまで、俺のことを知ろうとしているなんて――。  事務所から帰ると、俺はベッドにバッタリと倒れ込んだ。  イラストの依頼を2件を引き受けてきた。どちらも、思いのほか締め切りまで余裕があった ので、じっくり取り組んで丁寧な仕事が出来そうだ。  だけど…。  俺は大きく溜息をつきながら、さっきの出来事を考ていた。 最近、自分の周りで起こる予想外の出来事に、ついて行けていない状況だ。シュンとの仕事についてもそうだし、サチが俺を気に入って、俺のことを知りたいって言ってる事も…。進藤とサチが知り合いだったってことも、予想外すぎる。  それにしても――サチは、俺の何処が良いっていうんだ? もし、サチが、俺とシュンの間にあった事を、何か知っていたとしたら? リュウが知っていたと言う事は、サチが知っていても不思議ではないだろう。 だとしたら、サチが俺に言い寄ってくるのは、シュンとの間で、何かトラブルでもあったからではないのだろうか? シュンに嫌がらせするために――俺は、そんな事まで考えてしまった。  それから数日後、悩みの種『サチからの誘い』は、進藤を通してやってきた。  仕事部屋でイラストの下書きをしている時に、居間にある仕事用の電話がなった。順調に描いてる所だったので、電話の所まで行く気にならず、そのまま放っておいた。用事があれば留守電に入れてもらえば問題ないし――。  しばらくすると、留守電のメッセージが始まる前に電話は切れてしまった。きっと、大した用件では無かったんだろう。そう思い、俺はそのまま続けていた。 だけど、しばらくすると今度は仕事机の脇に置いてあるスマホがなりだした。画面を見ると、進藤の名前が表示されている。俺は仕方なく、電話に出ることにした。

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