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第31話
【AMSレーベル 事務所内】
テーブルに置かれた雑誌の表紙には、サーベルのメンバーの写真と、その上にかかるように「サチ衝撃の告白?!」と書かれた文字があった。
「これ…?」
「困ったもんだよな」
マネージャーの伊東がシュンを見ながら溜息をついた。
「読んでも良いんだろ?」
シュンが雑誌を手に取りながらそう聞いた。伊東は眉間に皺を寄せたまま頷いた。
「もう発売されちゃってるからいいよ。シュンにも話しておかないとと思っていた所なんだ。リュウとナツにも、もう連絡したし――」
雑誌の記事を読んでいくうちに、シュンの表情が固くなった。
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『じゃあ、次に、少しプライベートな話を聞いても良いですか?』
『うん、いいよ』
『有難うございます』
『何が聞きたい?』
『ファンの子も気になってると思うんだけど、短刀直入に聞きます。サチさんは今好きな人とかいるの?』
『うん。いるいる』
『え、そうなんだ? 気になるわ』
『初めて出会ったのは5~6年前。シュンに連れて行ってもらったカラオケ屋でバイトしてる子だった。自分でも、理由は良くわからないけど…何でだったんだろうなぁ? その子に会いたくて、しょっちゅうそのカラオケ屋に行ってた。他のメンバーと一緒だった時もあるけど、昔の友達とか誘って何度も行ってた』
『そうなんだ。会いに行ってただけ?』
『うん。人数聞かれたり、何時間ですか? とか聞かれて答えたりするだけ』
『意外と消極的なのね?』
『その頃、バンドも売れ始めた頃で、まだこれからって所だったし。おまけに、俺も男だしね』
『え? 「俺も男だしね」ってどういう事?』
『俺も男、相手も男って事』
『そうなの? ビックリしたわ』
『ビックリしなくていいよ。たまたま好きになった相手が俺と同性だっただけ』
『ごめんなさい』
『わかってくれれば良いよ。でね、ただ会えるだけで、幸せだったりして。なんか、可愛いでしょ?』
『えぇ、すごく。ひたむきな愛なのね?』
『そうそう。で、その人がいつも居る訳じゃないのにさ、今日はいるかな? とか思いながら行くんだ。その人がいるの見つけると「今日はラッキー」とかね』
『わぁ、可愛い』
『女子高生みたい?』
『えぇ、ちょっとね』
『へへ。それで、つい最近、その人に偶然会えたんだ』
『本当? 今度は何か意思表示した訳なの?』
『もちろん』
『やったね! でも、そんな話、ここでしちゃっていいの?』
『いいんだ。だって、隠していたくない。俺、幸せだから』
『ファンの子がショック受けちゃうんじゃない?』
『でも、これが事実なんだもの。好きな相手が同性でもいいと思わない? その人と俺の事、ちゃんと認めて欲しいんだ』
『うわ。今の顔、ぐっと来ちゃいます。男らしい!』
『そお? 照れるなぁ。まぁ、認めたくないって言う人が居ても仕方ないと思う。だからって自分に対して、変なウソはつきたくないんだ』
『皆そうしたいって思うけど、なかなか出来ない事よね 』
『そうかもね』
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そこまで読んで、シュンは雑誌を閉じ、溜息をついた。
「溜息でちゃうよな…」
そう言って、マネージャーの伊東も溜息をついた。
「え? あぁ」
シュンが上の空で返事をした。
「自分は良いけどなぁ。ま、尻拭いもマネージャーの仕事だけどさ」
伊東がもう一度大きくため息をついた。
「ご苦労様です。所で、何か反響あったの?」
シュンが昔の事を思い出しながら聞いた。鷹人が去った空港で大人げなく大泣きした自分、それを宥めるリュウ。その後、前のマネージャーが大慌てでとんできたっけ――。
「んー。ボチボチかな」
伊東がそう言って雑誌を手に取ると、くるっと丸めてポンポンと反対の手に打ち付けた。
「そう。ねぇ、伊東さん、サチの好きな相手って誰か知ってるの?」
「それが、誰にも言ってないみたいで。シュンのが知ってるんじゃないの? カラオケ連れて行ってたんでしょ? 俺はその頃の話知らないよ。まだサーベルのマネージャーじゃなかったし」
伊東が前のマネージャーに連絡を取ってみようかなと呟くのを聞いて、シュンは複雑な気持ちになっていた。
「俺は、わからないよ」
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