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第33話

「お前って、どんなタイプが好きなんだっけ?」  付き合いが長いけれど、進藤の彼女を見たことがなかったような気がする。 「年上で、頭が良くて、カワイくて、スマートな感じがいいな」  進藤はそう言いながら、今まで見たことのないようなニヤケ顔をした。 「もしかしてそれってタイプじゃなくて、恋人の事?」  俺がそう聞くと、ニヤケ顔がますますひどくなった。 「ははは。そうそう」 「年上だったのか?」 「そ、めちゃくちゃ惚れられちゃってね」 「え、お前が?」 「なんで驚くんだよ」 「だって…いや」  よく見ると進藤は、背が高くて体格も良く、頭も良くて、おしゃれだし、顔も十人並み以上だ。気が付かなかった……モテても不思議じゃ無い奴だったんだ。 「お前の恋人の話なんて、初めて聞くような気がする」 「鷹人が聞いてこないからだろ。多分、話した事無いと思うよ。だって、俺って基本的にお前のお守り役だもんな」  そう言われてみればそうかもしれない。頼もしくて色々助言をしてくれる進藤に、俺はずっと甘えっぱなしだったのかもしれない。まぁ、少しひねくれた所もある奴だけど――。 「いやぁ、いつも有難う。感謝してるよ」  感謝の気持ちを正直に伝えた。だけど…ふと見ると、進藤のデレデレしたニヤケ顔が、何かを企んでいるような笑顔に変っていた。 「感謝してるなら、お礼に俺のお願い聞けよな」 「え、何?」  本能的にヤバイと感じた。でも、もう逃れられないような気がする――。 「まぁ、次の店行ったらな」 「わかったよ。次は俺が奢れば良いんだろ?」  約束どおり、1軒目は進藤の奢りだった。次の店は俺が奢る事になりそうだから、自分の知っている店に行こう。と思ったのだが、進藤がどんどん歩いていってしまい、俺の意見をちっとも聞こうとしなかった。 「え?! こんな店入るの?」  しばらく歩いてから進藤に連れられて来た店は、いかにも高級そうな店だった。 「たまには良いだろ?」 「でもって、俺が奢るんだろ?」 「いや、奢ってくれなんて言ってないよ」  進藤がキョトンとした顔で俺を見た。 「じゃ、お願いってなんだよ?」 「とにかく入ろうぜ」  進藤に付いて店に入ると、正装した店員達が進藤と俺に丁寧に挨拶し、すぐに店の奥のほうの席に案内してくれた。 「すっげ、高そう…」  俺達は高級家具に囲まれた煌びやかな個室に連れて行かれた。  進藤が注文をした後、俺は進藤の腕をつついた。こんなにキンキラした店を2軒目に選ぶなんて、どういうことなんだ? 「なぁ、ちょっと落ち着かないんだけど。なんで個室なわけ?」 「まぁ、あんまり人目につかない方が良いと思ってな」  どうして人目を気にするんだよ? お前は一体ここで何をする気なんだ? そんな風に思っていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

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