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第39話

 その時、病室のドアがノックされた。その瞬間、サチと進藤は何事もなかったかのように距離を取った。 「どうぞ」  俺がそう声を掛けると、ゆっくりドアが開いた。 「あれ、シュンさん?」  ドアを開けたシュンが、遠慮がちに覗き込んでいた。 「鷹人?」 「どうぞ、入って下さい」  シュンが俺の言葉に小さく頷いて、病室に入って来た。 「やぁ、シュン」  サチが声をかけると、シュンが表情を曇らせた。 「おい、サチ」 「何? シュン」  シュンの声のトーンがいつもと違うような気がした。 「やあ、じゃないだろ? お前が、お前が、渡辺さんを誘ったりしなかったら、こんな事にならなかったのに」  シュンがサチを見た途端、顔を歪めてそう言い放った。シュンが怒っている所を初めて見た。 「だからって、シュンが怒る事でもないだろ?」  サチが冷静にそう言い返した。サチの言葉を聞くと、シュンが眉間に皺を寄せて俯いた。 「シュンさん、サチさんが悪い訳じゃないんだよ。それに、俺、ちゃんと生きてるし」  シュンが俺を見つめて、表情を曇らせた。 「俺が悪かったんです。俺が鷹人を誘ったんだし、おまけに酔っ払いの喧嘩を止めようとなんてしたから」  進藤がそう言うと、シュンが小さく溜息を付いた。 「すみません。誰を責めても仕方のない事でした」 「さ、俺達はもう席を外そうかな」 「じゃ、お大事に。そうだ、オヤジさんには連絡どうする?」  俺の父親は日本に帰っては来たものの、1年後には再び移動が決まって、今度は神戸に行っているのだ。 「いや、心配するからいいや。ありがとうな」  俺がそう答えると、「了解」と言って進藤とサチが病室を出て行った。

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