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第43話
「そうなんだ。ずっと一緒に仕事したいって思ってて、やっとその夢が叶ったからね。夢が破れちゃうのかと思ったら悲しくて。でも、大丈夫だってわかったら、今度は嬉しくてさ。涙出ちゃったんだ。何か、恥かしいね俺。吉岡さんも三宅さんも、他の人には秘密にしてね」
シュンがそう言ったら、吉岡さんが興奮したように頷いた。
「もちろん他の人になんて言いません! 何か、すっごく嬉しい。シュンさんと私たちしか知らない秘密なんて――」
その時、ファンってありがたい存在なんだなと思った。それから、シュンって、やっぱりすごい人なんだなぁって。吉岡さんのシュンを見つめる目が少女漫画のようにキラキラ輝いていた。
「そうだ、俺、そろそろ帰らないと」
「えー、そうなんですか? じゃあ、私たちも帰りましょ、三宅さん」
「吉岡さん達は、もう少し居てあげたら? 急にみんな帰ると寂しいものなんだよ」
シュンが優しく窘めるように言った。
「そっか、そうですよね。シュンさん、会えて嬉しかったです」
吉岡さんが素直に頷いた。シュンの力って絶大だ。
「じゃあね。三宅さんも吉岡さんも有難う。それから、渡辺さん、お大事に。また来ます」
シュンがサングラスをかけて、病室を出て行った。
その後しばらく、吉岡さんは興奮状態だった。まぁ、わからなくないけどね、その気持ち。
俺は、素直に喜んでいる吉岡さんがとても羨ましかった。俺も、ただのファンでいれば良かったのかもしれないな。
興奮状態の吉岡さんが色々とシュンについて語った後、今まで俺と一緒に話の聞き役をしていた三宅さんが、突然口を開いた。
「そう言えば、ちょっと聞いた話なんだけど、シュンって去年離婚していたんですって」
「え?」
俺は突然ことに頭が付いていかなかった
「えぇ! 全然知らなかった。なんで知ってるの三宅さん? 雑誌とかに出た事ないでしょ?」
「あっ、いけない…」
三宅さんが慌てたような顔をした。
「何? 教えてよ! そこまで言ったなら、何話しても同じよ」
吉岡さんが三宅さんに詰め寄った。
「わかったわよ。たまたまね、私の母親の友人がシュンのお母さんと知り合いだったらしくて、それでちょっと相談されたんだって」
「離婚なんて――」
シュンはそんな素振りを見せていなかったのに…。
「ねぇ、どうしてなの? 原因は?」
「うーん、どうしよう? こういう風に噂が広がってマスコミにばれるのかな」
三宅さんが困ったように呟いた。
「大丈夫よ! 私達はシュンの秘密を守れるもの」
吉岡さんが再び興奮気味にそう言った。
「本当に言わないでよ吉岡さん」
「もう! 三宅さんったら。さっきだって、シュンさんと約束したのも。私がシュンの為にならないようなこと、言うわけないでしょ」
「それじゃあ、話すけど、本当かどうかは、シュンのお母さんもシュンにハッキリ聞けなかったみたいなんだけどね」
三宅さんの話を聞いて、俺はそれが本当の理由なのかどうか、すごく気になってしまった。でも、違う理由だとしたら?
シュンは今「幸せだ」って俺に言ってた。鷹叶君のがとても大事だって。どうして?
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