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第48話

「今頃になって、って感じよねぇ? どこから出た話なのかしら?」 「そうよね、うーん? シュンの周りに居る人は、知ってるはずだから、少しづつ広まっていったんじゃないかな。事務所側も事実だって認めてるしね」 「そう言えば、私が見た番組では、シュンがFAXで送ってきたっていうコメントも出てたわよ」  三宅さんがそう言うと、吉岡さんと一緒に俺も身を乗り出してしまった。 「どんな内容?」  吉岡さんが口を開く前に、俺が聞いていた。俺はシュンの言葉が知りたかった。 「離婚は、お互いに話し合って決めた事だって。原因はシュンが忙しくて全然家族の事を考えられなかったからだっていうけど、わからないわよねー。奥さんと子供を幸せに出来なくてって謝罪の文章まであったのよ」 「そうなの? じゃあ、子供がシュンの子じゃないって事は、全然話題になってないんだ?」 「誰かが言わなきゃ、話出ないんじゃない? 結婚の時だってあんまり詳しい話は雑誌とかにも出なかったし、事務所がストップさせるでしょ?きっと。でも、シュンの子じゃないって話も確実かわからないけど」 「そうね」 「あのさ吉岡さん、シュンさんが結婚したのって、いつ頃だった?」  俺は気になって聞いてみた。 「えーと、7年位まえかな? 私がまだ高校生のころで、その頃すっごく好きだったから、ショックでねー。学校で友達と一緒に泣いたわよ。だってさぁ、付き合って半年くらいで結婚したのよ? 私なんてもっと前からシュンのファンだったのに」 「そっか」  俺と初めて会ったのは、結婚して何年もたってない頃だったんだ。離婚の原因に俺の事が少しでも関係していたらって思うと胸が痛かった。でも、シュンと奥さんが出した結論だから、俺にはどうしようもないのかもしれない。 「ねぇ、渡辺さん。シュンさん、お見舞いに来た? あれから」  吉岡さんが俺に詰め寄ってきた。 「え、あぁ、来たよ」 「もう! 何で教えてくれなかったの?」 「だ、だって、平日の昼過ぎだったから。吉岡さん、仕事中だろ?」 「仕事中だって来たわよ! あーあ。チャンスだったのに」 「あのね、吉岡さん、彼氏がかわいそうでしょ? あなたから付き合って欲しいって言ったんでしょ」  三宅さんが呆れ顔で、そう言った。 「だってー。シュンの事はずっと好きなんだもん。彼氏の事を好きになる、ずっと前から」  その後、吉岡さんの熱い思いを再び聞かされた俺と三宅さんは、顔を見合わせ苦笑するしかなかった。  シュンの話が終わったと思うと、今度は進藤の話が始まった。最近、ファッションが変わってきたから、きっと彼女が出来たんだろうって。 『彼女』じゃ無いんだけどね、と思ったけれど、何も言わないでおいた。  俺はしばらく彼女達の噂話を聞き流しながら、シュンの離婚の事について考えていた。 「ねぇ、渡辺さん、聞いてる?」  俺の顔を覗き込みながら吉岡さんが言った。 「あ、わっ、ごめん、何?」 「ずっと一点見つめてるんだもん、具合悪くなったかと思ったわよ」  急に目の前に現れた吉岡さんに慌てていると、そばで三宅さんが笑いながらそう言った。 「ごめんね。最近、夜よく眠れないから、今頃眠くっなてさ」  俺がそう言うと、吉岡さんが「ゴメン、ゴメン」と言ってから「そう言えば、一応ケガ人だったものね」と謝った。 「一応って…」 「あ、そろそろ帰らないと。そう言えば、退院はいつ頃なの? 進藤さんも気にしていたのよ」  俺の言葉を遮るように吉岡さんが話し出した。良い子なんだけど、あんまり人の話を聞くのは上手くないんだよな。  「あぁ、退院は月末位だって」 「良かったわね、もうすぐ帰れるのね」 「うーん、家の中どうなってたかって考えると、ちょっと恐いかも」  俺がそう言うと、三宅さんが「何か困った事あったら言ってね。片付け位は手伝えるから」と答えた。吉岡さんも「うんうん」と頷いてたけど…。三宅さんにならお願いしても良いかなとチラッと考えていた。 「有難う」 「じゃ、お大事に」  2人が帰ると、病室はいつものように静かになった。  シュンの離婚が事実だとわかって、俺は複雑な気持ちになっていた。離婚の本当の理由は何だったんだろう?

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