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第56話

 腹が減ってきたので時計を見ると、午後7時を回っていた。明日は食料を調達しないと、と思いながら、買い置きしてあったカップラーメンを食べた。 その後、シュンが持ってきてくれたケーキを頂くことにした。シュンと一緒に食べたかったな…と思いながら、コーヒーを飲んだ。  そして一息ついた後、もう一度仕事机に向かい絵を描いた。途中で何度も眠気に襲われながら作業を続けた。病院では暇があれば眠れたから、こんなに長い間起きていたのは久しぶりかもしれない。  何時になっただろうかと時計を見ると、11時を回っていた。 「もうこんな時間だったのか。そろそろ寝よう…」  眠さのピークを迎えてしまった俺は、絵を描くのをやめて寝室に行った。  ベッドに入り、まどろんでいると、ベッドの脇のテーブルに置いてあったスマホが鳴り出した。 「寝てた?」  通話にした途端、シュンの声が耳に飛び込んできた。 「えっと…ベッドに入った所です」 「今、君の家に向ってる途中なんだ」 「終わったんですか?」 「今日の分はね。忙しくても、ちゃんと家で寝られる時間を作ろうっ! って、みんなで決めてるんだ。だから――」 「あの、でも」 「あと10分位ね。じゃ」  ちゃんと大人しく寝る気でいるのかな?  俺はパジャマのままベッドから這い出し、居間に行った。服は着替えておいた方が良いんだろうか? と考えて、どうせ男同士だからと考えなおす。 でも待てよ、男同士だけど、今は恋人? なんだよな…。  ゴムの買い置きなんて無かったな。いやいや、セックスはサチに止められたじゃないか。 するとかしないとかは、置いておいて、とにかく、シュンは俺に会いに来てくれるんだ! 俺たち、本当に恋人同士になれたんだ――。   ベッドに戻って1人でグルグル考えていると、玄関のベルが鳴った。慌ててベッドから下りてインターフォンに出てみると「俺だよ」というシュンの声が聞こえた。 開錠ボタンを押してから急いで玄関に行ってドアを開けると、エレベーターの動く音が微かに聞こえてきた。しばらくすると、エレベーターのドアの音が聞こえ、続いて廊下を走る足音が近づいてきた。  そして次の瞬間、目の前にシュンが現れ、俺の胸の中に飛び込んできた。 「鷹人! 会いたかった」 「ちょ、シュンさん、まだ、玄関開いてますって」  シュンの体を抱きしめたまま、慌ててドアを閉めた。それから、シュンの唇にキスを一つ落とした。 「俺も会いたかったです」  そう言って目を見つめたら、シュンが嬉しそうに微笑んで、顔を寄せてきた。 「愛してるよ、鷹人」  そう囁いたシュンの柔らかい唇が、俺の唇に触れた。俺はシュンの薄く開いた唇の隙間から舌を侵入させ、シュンの舌の感触を味わった。

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