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第59話

「俺ね、昼間からもうヤバイってくらい、キュンキュンってしてたんだ。でも、自分でするの嫌だったし。風呂上がるまで待てそうも無くてね」  シュンが何事もなかったのようにそう言った。 「はぁ。でも、ちょっと焦りました」  脱力しきった俺がそう言うと、シュンが俺の鼻を指でツンと押した。 「ほら、また敬語になってるよ」 「えっと、とにかくビックリ。だってシュン、色っぽいし、あの、すっごく気持ち良かったよ」 「フフッ、良かった」  シュンが可愛く微笑んで俺を見た。 ずっと天使だって思ってたけれど、もしかしたら、小悪魔だったのかな? なんて、その微笑に見とれながら思っていた。  その後、シャワーでお互いの身体を軽く流し、風呂場を出た。風呂場の前には、さっき脱ぎ捨てたパジャマがくしゃくしゃになって落ちていた。 「パジャマなんて要らないかもね」  タオルで身体を拭きながらシュンが言った。 「シュン? そんな、無理はダメだよ。レコーディングが出来なくなったら…」  俺は、ちょっと焦って言い返した。 「鷹人ったら、何言ってるんだよ。俺は裸のまま抱き合って眠りたいだけだって」  俺は自分の思っていた事が恥かしくて、頭を拭くフリをして俯いた。 「鷹人?」 「何?」 「でも、1回はするよ。さっき言っただろ?」 「本当にいいの?」 「いいに決まってる。抱いてくれなかったら、俺眠れないよ」  あまりにもストレートな言い方で、言われた俺のほうが照れてしまった。 「鷹人、可愛いね」 「はぁ? そうかなぁ?」 「うん、すっごく」  シュンの方が何十倍も可愛いのに、何だか微妙な気分。やっぱりシュンの方が年上だからかな? 「ほら、薬付けるよ」  シュンは、俺が用意しておいた服を着ると、俺の手を引いて居間にむかった。俺は、唯一濡れるのを免れたトランクスをはいただけの姿で、ちょっと恥かしいような感じだった。  俺の背中に薬を付け終ると、シュンがコンビニの袋を持って立ち上がった。 「さぁ、鷹人。ね?」 「あ、えっと、前もって聞いておかなきゃ。シュンは明日、何時出発?」 「んー? ここを9時に出る予定だよ」 「了解。俺が起こしてあげる」 「ありがと。よろしくな。ほら、行こうぜ」  俺はシュンに手を引かれ、ベッドルームに向った。自分の部屋なのに妙な緊張を覚えていた。 「鷹人、愛してるよ。ずっと傍にいてくれよ」 「俺もシュンを愛してる。これからもずっと」  シュンの体を抱きしめてキスをした。  コンビニの袋の中には、コンドームとローションだけが入っていた。他には、お菓子とか飲み物とかも入ってなくて、いかにも、これからやります!って感じだったので、シュンがこれを買ったときの様子を思い浮かべずにはいられなかった。  それからの2人に言葉は要らなかった――。  俺はシュンの服を脱がせると、ベッドに押し倒し、シュンの体を優しく抱いた。白い肌のあちこちに、俺の印を付けた。でも、他の人には見られない所にだけ。 キスをするたびにシュンの口から漏れてくる、甘い喘ぎ声に誘われて、シュンの全てを愛した。夢中で抱いたあの頃とは違い、シュンの体が辛くないように気づかいながら抱いた。一つに溶け合い、抱き合ったまま眠った。言葉に言い表せなくらい幸せだった。

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