60 / 62

第60話

 眩しくて目を覚ますと、もう8時半を回っていた。 「うわ、まずい」  目覚ましをセットしておいたつもりだったのに――。  俺は慌てて服を着るとシュンを起こしにかかった。 「シュン、ごめん。8時半過ぎてる。とにかくシャワー浴びないと――」 「んー」  シュンが起き上がって伸びをしてから、俺の首に腕を回してきた。 「おはよう、鷹人。まだ眠いなぁ」  シュンが俺の唇に音を立ててキスをすると、またベッドに寝転んで目を瞑ってしまった。  なんて可愛いんだろう? でも、ニヤケてる場合じゃないぞ、起こさなくちゃ。 「シュン、起きて。昨日、そのまま寝ちゃっただろ?」 「んー、いいよう。鷹人の匂いに包まれていたい」 「ダメだって、ほら起きて。何か食べていく? 用意するけど」 「わかったってば、起きるよ。朝ご飯はいらない。むこうで食べる事になってるから」 「りょーかい。さ、起きて」  急いでシュンをベッドから連れ出し、風呂場に行く。脱衣所には、着替え用に俺の服から選んで出しておいた。少し大きいかもしれないけど――。  シュンを風呂場に押し込み、ホッと一息ついていると、インターフォンが鳴った。朝から一体誰だろう? 「あの、伊東と申します。すみませんが、そちらに澤井さんが――」  伊東さんって、もしかして、シュンのマネージャーの伊東さん? 「はい、います。今開けますので…」  しばらく待って、玄関を開けると、そこに居たのは、やはりシュンのマネージャーの伊東さんだった。 「あ、あれ? 渡辺さんのお宅だったんですか?」 「あ? はい。どうも、おはようございます」 「おはようございます。あの、えっと、シュンは…」 「シュンさんは、今ちょっと、シャワーを浴びてます」 「そうですか。昨日シュンが、こちらの住所に迎えに来るように言ってたもので」 「…あの、とにかく上がってください。もうすぐ出て来るんじゃないかな」  シュンが俺達のことを、伊東さんに何て言ってるのかわからなくて、俺は困ってしまった。 「はい、じゃあ、おじゃまします」  伊東さんも、俺を見てメチャメチャ戸惑っているのがわかる。  居間に行って、椅子をすすめている時、風呂場のドアが開いて、シュンの声がした。 「ねぇ、鷹人ー、誰か来たの?」  伊東さんが俺の事を見て、首を傾げていた。 「えっと、あの」  俺は、伊東さんとシュンの声のする方を交互に見て苦笑いしていた。 「ねぇ、鷹人ったら!」  シュンがタオルで体を拭きながら、居間にやって来た。  裸のままじゃん…服を出しておいたのに――。 「あーおはよう、伊東さん、もう来たんだ。ありがとね」 「おはよう。って、なぁシュン、それ…」  そう言った伊東さんは、シュンの体のあちこちにある赤い痣を、驚いたように見つめていた。 「す、すみません」  俺は焦って、謝ってしまった。 「鷹人、何謝ってんのさ? 良いんだよ。俺がやりたいって言ったんだから」

ともだちにシェアしよう!