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第60話
眩しくて目を覚ますと、もう8時半を回っていた。
「うわ、まずい」
目覚ましをセットしておいたつもりだったのに――。
俺は慌てて服を着るとシュンを起こしにかかった。
「シュン、ごめん。8時半過ぎてる。とにかくシャワー浴びないと――」
「んー」
シュンが起き上がって伸びをしてから、俺の首に腕を回してきた。
「おはよう、鷹人。まだ眠いなぁ」
シュンが俺の唇に音を立ててキスをすると、またベッドに寝転んで目を瞑ってしまった。
なんて可愛いんだろう? でも、ニヤケてる場合じゃないぞ、起こさなくちゃ。
「シュン、起きて。昨日、そのまま寝ちゃっただろ?」
「んー、いいよう。鷹人の匂いに包まれていたい」
「ダメだって、ほら起きて。何か食べていく? 用意するけど」
「わかったってば、起きるよ。朝ご飯はいらない。むこうで食べる事になってるから」
「りょーかい。さ、起きて」
急いでシュンをベッドから連れ出し、風呂場に行く。脱衣所には、着替え用に俺の服から選んで出しておいた。少し大きいかもしれないけど――。
シュンを風呂場に押し込み、ホッと一息ついていると、インターフォンが鳴った。朝から一体誰だろう?
「あの、伊東と申します。すみませんが、そちらに澤井さんが――」
伊東さんって、もしかして、シュンのマネージャーの伊東さん?
「はい、います。今開けますので…」
しばらく待って、玄関を開けると、そこに居たのは、やはりシュンのマネージャーの伊東さんだった。
「あ、あれ? 渡辺さんのお宅だったんですか?」
「あ? はい。どうも、おはようございます」
「おはようございます。あの、えっと、シュンは…」
「シュンさんは、今ちょっと、シャワーを浴びてます」
「そうですか。昨日シュンが、こちらの住所に迎えに来るように言ってたもので」
「…あの、とにかく上がってください。もうすぐ出て来るんじゃないかな」
シュンが俺達のことを、伊東さんに何て言ってるのかわからなくて、俺は困ってしまった。
「はい、じゃあ、おじゃまします」
伊東さんも、俺を見てメチャメチャ戸惑っているのがわかる。
居間に行って、椅子をすすめている時、風呂場のドアが開いて、シュンの声がした。
「ねぇ、鷹人ー、誰か来たの?」
伊東さんが俺の事を見て、首を傾げていた。
「えっと、あの」
俺は、伊東さんとシュンの声のする方を交互に見て苦笑いしていた。
「ねぇ、鷹人ったら!」
シュンがタオルで体を拭きながら、居間にやって来た。
裸のままじゃん…服を出しておいたのに――。
「あーおはよう、伊東さん、もう来たんだ。ありがとね」
「おはよう。って、なぁシュン、それ…」
そう言った伊東さんは、シュンの体のあちこちにある赤い痣を、驚いたように見つめていた。
「す、すみません」
俺は焦って、謝ってしまった。
「鷹人、何謝ってんのさ? 良いんだよ。俺がやりたいって言ったんだから」
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