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第2話

(消えたい)  ただ、少しだけ自棄になっていた。  一晩の相手を探すだなんて馬鹿な考えを起こしたのも、随分と久し振りだったのに、とんでもない男を選んでしまった自分を悔やむけれど、全ての歯車が狂った今、嘘を吐き続けて逃げた自分には、当然の報いかもかもしれない…… と、ぼんやり湊は考える。 (好きだった)  閉ざした瞼の裏に浮かぶのは、最愛の男の姿。  何度となく体を繋げ快楽を共有したが、心を繋ぎ止めることは最後まで叶わなかった。 (言えば、何かが変わったのだろうか?)  ふと、そんな考えが頭を過ぎるが、それも激しい腹痛により霧散する。 「ん、んぅっ! 」 「痛いよな。でも、まだ終わらないぜ。コレ、おまえの男だろ? 俺、優しいから、迎えに来いってライン送っといてやるよ」 「うぅっ」  自分のスマートフォンを示され、蒼白になった湊は首を振るけれど、構わず男は苦しむ姿を何枚も写真に撮った。 「おねがい、迎えに来て、ハートっと。これでいっか。じゃ、俺帰るから。今日は楽しませてくれてありがとう」 「ぐ…… うぅっ! 」  後孔から男のペニスが引き抜かれたと思った刹那、いきもうと伸縮しかけた湊のアナルを埋めるかのように、無機質な物体が、無理矢理そこへとねじ込まれる。 「迎えが来なかったら、自分で何とかしな。まあ、がんばれよ」  軽い口調で告げてくる男に、反応できる余裕は既に持ち合わせていなかった。  (いたい、痛い)  扉の開閉する音が聞こえ、部屋が静寂に包まれる。 「んっ…… んぅっ」  下腹部を襲う断続的な痛みの間隔が短くなり、湊は冷や汗を流しながらも、必死にいきもうとするけれど、挿し入れられたアナルプラグは布テープで固定されていて、どれだけ必死に力を込めても出ていってはくれなかった。 ((かい)…… ())  うっすら開いた瞳の先には点滅しているスマートフォン。仮に画像が送られていても、彼は迎えには来ないだろう。 (好き…… なんだ)  痛みに遠のく意識の隅、一生口に出すことのできない思いが一気に溢れ出し、長い睫に縁取られている切れ長の目の端からは、涙が一筋頬を伝って、シーツにポタリと染みをつくった。

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