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第7話

 ***  最初は酔った勢いだった。  新人研修で担当をした六名の社員の中で、配属が本社になったのは海里一人だけだった。  なついてくる彼の事を可愛いとは思っていたし、物心のついた頃から、ゲイであることを自覚していた湊だから、海里のことは男としても魅力的だと思っていた。だが、それはノンケの男性が、美人な女性を高嶺の花だと思う感情となんら変わらないものだったと思う。  新人ながら海外事業部へ抜擢された海里の噂は、彼の容姿の良さも相まって、特に女性社員などからよく聞いていた。  そんな彼から飲みに行きたいと誘われたのは、研修期間が終了してから二ヶ月ほどがたってから。メールアドレスは担当していた全員と交換していて、地方へ配属された社員から相談なども受けていたから、もしかしたら、彼にも悩みがあるのかもしれないと思った。 「就職して遠恋になったから、恋人となかなか会えなくて」  たぶん、好みの相手と飲めることに、多少浮かれていたのだと思う。  一通り仕事の話を聞き終えたあと、付き合っている相手はいるのかと尋ねた時には、いつもの自分の酒量を遙かに超えて飲んでしまっていた。そして、酒に強いとは言っていたが、海里の方も相当飲んでいたのだと思う。  独り寝の夜が淋しいなどと甘えたように言うものだから、添い寝してやるとふざけて返せば、お願いしますと体育会系なノリで言われて笑った事は、かろうじて覚えている。  だが、次に意識を戻した時、知らぬベッドで海里に抱かれて寝ていたのには驚いた。 「可愛かったですよ。男でも、星川さんみたいな人ならいいかも」  慌ててベッドの上から降り、洋服を見つけ身につけていると、目を覚ました海里の声が背後から聞こえてきた。 「持田、このことは…… 」 「誰にも言いませんよ。星川さん、ゲイなんですね。誘われたときはビックリしたけど…… ちょっと癖になりそうかも」 「なら……また呼べよ。お前が誰にも言わないなら、処理の相手くらいしてやる」  精一杯の虚勢を張って抑揚無く告げた言葉で、自分の事を遊べる相手と思わせることに成功した。

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