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第14話

「アウゥッ! 」 「名前も知らない相手に、こんなことさせるんだ。それに、すごい痕。体中真っ赤だ。これで打たれて感じたの?」  ベッドの上へと残されていたパドルを手に取り尋ねた海里は、愉しそうに口端を上げ、胸のあたりをその先端でそっとなぞってくるけれど、下腹部の激しい痛みと、それに反して高まる熱に、混乱している湊には…… 彼が何を言っているのか半分ほども伝わらない。 「…… たすけて…… いたい、いたいよ」  蒼白な顔で海里を見ると、すぐに「いいよ」と返事が来たから心の底から安堵した。  無言で体の拘束を解き、こちらを見下ろす海里の瞳に残虐な光りが宿っているのに、湊はまだ気付かない。 「立てる? 」 「だいじょ…… ぶ、ありがとう」  本当に立てるかどうかはやってみるまで分からないが、痺れる体を叱咤しながら、起きあがることには成功した。 「ふっ…… くぅ」  何とか体の位置をずらし、ベッドの隅へと移動すると、湊は床へと脚を降ろし、立ち上がろうと力を込める。するとその時、思いも寄らない強い衝撃が、ふいに背後から湊を襲った。  *** 「…… なにしてっ」  驚いたようにこちらを見上げ、震える湊の姿を見ながら、どうしようもなく無茶苦茶にしたい欲求は、ピークに達した。 「気が変わりました。こんな夜中に、この俺を呼び出したんだから、それなりの礼は貰います」  右手で掴んだパドルの面で、自らの左掌を叩き、音を大きく響かせてやると、怯えたように震える姿に、黒い歓びがわいてくる。 「まずは……這ってトイレまで行きましょうか。ほら星川さん、犬みたいに這いつくばってください」 「な……そんなこと、できるわけ……アァッ!」  反論しかけた湊のペニスを爪先で軽く踏みつけながら、太股あたりにパドルを落とすと、面白いくらいに体が跳ねた。 「ほら、早く」  腰が立たない様子の湊を抱き上げてから床へと降ろすと、下腹部を圧迫されたようで、悲鳴をあげてうずくまる。 「……むり、むりだ。も、動けない」 「無理じゃないでしょ、ドエムなんだから」  背中を軽く打ち据えながら、蔑むようにそう告げると、縋るようにこちらを見る目に嗜虐心が煽られた。 「それとも、我が儘言って、お仕置きされたい? 」  口端を上げ、パドルを(かざ)すと弾かれたように動き出す。  緩慢な動作ながらも、必死に四つに這おうとするが、どうしても腰の立たない様子が、滑稽(こっけい)で…… 愛おしかった。

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