15 / 22
第15話
「しょうがないな」
なるべく冷たくそう言い放つと、細身の体がビクリと震え、緊張に体を硬くするのが見て取れる。やりすぎなのは自覚しているが、どうにも気持ちが収まらなかった。
「なあ湊、このまえ一緒にいた男は、誰?」
「あっ…… あぅっ」
海里は床へと膝を着くと、湊の体を抱え起こして、腹部をやさしく撫でさする。表情を見たくてのぞき込むと、血の気が引いた顔は白く、瞳は虚ろに宙を見つめ、カタカタと歯が鳴っていた。
そろそろ極限状態だろうと判断を下した海里は、姫抱きにした湊をトイレへ運び込んでから、アナルプラグを塞ぎ止めている布テープを剥がしてやる。
それから、プラグが抜けてしまわぬように押えながら便座へと座らせ、浅く息を繰り返す湊に「どうしてほしい?」と低く尋ねた。
「……ねがいだから、出ていってくれ。いたい、いたい」
絞り出すような小さな声で答える湊に笑みを向け、海里は彼へと見せつけるように、ことさらゆっくり首を振る。
「もう限界だろ。見ててやるよ」
腹を左手で圧迫しながらプラグを強く捻じ込むと、悲鳴を上げた湊の瞳から大粒の涙があふれでた。
「もう一回だけ聞く。どうしてほしい?」
耳朶を噛みながら再度告げ、小声で答えを囁いてやると、非難するようにこちらを見るが、
「別に、俺はずっとこのままでもいいよ」
そう言いながら、笑みをたたえて下腹部を押すと、声にならない悲鳴を上げた湊が腕を掴んできた。
「…… て、みて、おれが……がまん、できなくて、漏らすとこ…… みて……ください」
悔しいのか恥ずかしいのか、湊の頬へと僅かに朱が差す。ここで焦らせば彼を更に追い詰めることができるのだが、今は止めておくことにした。
「いいよ。見てあげる。でもその前に……この前の夜会った時、湊と一緒にいたのが誰だか教えて? 」
「…… あれは、高林は…… 同期で、ともだち…… だ」
「ああ、名前だけは知ってる。かなり出来る人だって噂をよく聞くけど、同期だったんだ。で、淫乱な湊は、アイツとも寝てるの 」
「そんなこと…… しない。ぜったい、しない」
縋るようにこちらを見ながら訴えてくる湊の姿は、仕事をしている姿からは想像も出来ないくらいに情けないものだったけれど、そんな姿を見られたことに、海里は溜飲 を僅かにくだす。
ともだちにシェアしよう!