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第19話

「なあ湊。腕、好きに動かしていいよ」 「ふぁ…… んぅ」  口腔内から指を引き抜いた海里がそう告げたとき、湊の理性はその(ほとん)どが、快楽に敗れ去っていた。 「あ…… あ」 「動いて欲しい? 」 「……うごいて、海里、もっと…… ひっ、ああっ! 」  素直にもっとと彼に強請れば、浅い場所にある快楽のツボを的確に押され嬌声が上がる。 (ゆめだ、これは…… ゆめだ)  これが現実であることは分かっているにも関わらず、全ては夢だということにして、溺れる道を湊は選んだ。 「かいり…… かいり…… 」 「驚いたな。こんな姿が見れるなんて」  甘えたように名前を紡ぎ、懸命に腕を前へと伸ばすと、体を屈めた海里が小さく呟くが、考える事を放棄した湊はそのまま彼の首へと抱きつく。  これまで…… 縛られた状態で抱かれるのが常だったから、初めて触れた肌の熱さに、感極まった湊は軽く達してしまうが、海里はそれを笑いはしなかった。 「やっぱり、俺、湊が好きだ」  そればかりか、夢のように都合のいい言葉が耳へと入ってくる。 「……うそだ」 「そこは即答なんだ。傷つくなぁ」  体を密着させているから、おかしそうに喉を鳴らして笑う海里の顔は見えないが、先程までとは纏う空気が違っているのは伝わった。 「湊は俺が好きだろ?」  緩く体内を穿ちながら、耳朶をベロリと舐め上げられ、おまけに胸の小さな尖りをキュッと摘ままれて引かれれば、臍の奥のほうから更なる疼きが次々湧きだしてくる。 「くっ…… うぅ…… ん」 「言わないと、動いてあげない」  続く意地悪な彼の言葉に、優しい響きを感じた刹那、塞ぎ止めていた心の(たが)は、あっけないくらい簡単に壊れた。 「……お前、彼女いるから……セフレでいいって……思ってた」 「うん。それで?」 「けど、好きになって…… 言えなくて、辛くて……」 「だから逃げようと思った 」  尋ねる声は柔らかく、先程の彼と同一人物だはとてもとは思えない。湊が小さく頷き返すと、海里は「そうか」と呟くように言ってから、抱きつく湊の背中へと手を回し、男にしては華奢な体を軽々と引き起こした。 「うっ…… うぅっ」  すると自然に対面座位の格好となり、自重で海里の長大なペニスが奥深くへと挿入ってくる。突き抜けた愉悦に一瞬意識を飛ばしかけた湊だったが、萎えかけたペニスを強く掴まれ、すぐに現実へ引き戻された。 「好きだって言ってくれたら良かったのに」 「いえる……わけない。俺、便所だし、ゲイだし……や、海里、やめっ!」  言葉の途中で尿道口へと爪を立てられ、下から激しく突き上げられれば、堪えることも出来ずに湊は彼の腹へと吐精してしまう。  もはや、出しすぎたそこは痛みを覚え、必死に制止を求めるけれど、構うことなく海里は深い場所を(えぐ)るように穿ってきた。

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