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第21話

 弱り切った湊はすぐに高熱を出し寝込んでしまい、先週は一週間、会社を休む羽目になったのだが、完治するまでは心配だから、海里の部屋へと繋いでおいた。  会社へ行くときは一人にしたが、水分と食料はダイニングへと用意していたし、繋いだとはいっても服を捨ててしまっただけだから、外に出ようと思わなければ、何ら不自由は無かったはずだ。  それでも、彼女が来たら申し訳ないと怯えたように訴えてくるから、海里はとうとう本当の事を彼に伝えることとなった。  湊と関係してからすぐに、当時の恋人と別れたこと。  先日一緒にいたのは妹で、している指輪は同じブランドの別の物だということ。  特別な感情を海里に対して抱いていたが、セフレと言われているのだから、当面はそれを享受(きょうじゅ)しつつ、少しずつ近づけたらいいと思っていたということ。  それらを告げても湊はすぐに納得などしなかった。  海里はゲイじゃないのだからとか、優しいから同情しているだけだとか、自分は子供が作れないとか、後ろ向きな言葉ばかりを並べたて、頑なに勘違いだと言い張った。  だが、そんな言葉はねじふせて、耳元で愛を囁くうちに、とうとう湊は自ら海里の腕の中へと堕ちてきた。 「そういえば、どうして俺がラインで呼ばれたんだろう。結果的には良かったけど……他の人には送られてなかった?」 「それは、大丈夫だったから、気にしなくても……いい」 「ならいいけど、もうあんなこと、絶対しないでくださいね」   外に人影がないことを確認してからキスを仕掛けると、唇が触れたその瞬間、慌てたように体を離し、顔を真っ赤に染め上げる。 「海里、こういうのは、ちょっと……」 「今日は残業になりそうなので、先に家で待っててください」  すれ違いざま掌を掴んで合い鍵を握り込ませれば、驚いたようにこちらを見るが、そこで人が入って来たから、それ以上は何も言わずに喫煙所を後にした。  本当は知っている。  湊のラインに登録されているのは自分一人だと。    それだけ自分は彼にとって〝特別〟だということを。

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