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第一章・2
サロランニ王国は、小さな国だ。
敵対する強国の、ちょうど真ん中に挟まれて位置している。
それでも小さなこの国が毅然として中立を守っていられるには、二つの理由があった。
一つは、大いなる女神・ラニマの加護がことのほか篤いから。
豊穣の女神・ラニマのもう一つの顔は、戦女神。
ラニマの導く軍勢は必ず勝利を掴む、という言い伝えはこの地方にまだ根強く残っていた。
そして、もう一つ。
ラニマの祝福を受けた屈強の戦士のみが名乗ることを許される、カラドの魔闘士の存在だ。
魔法を闘技に乗せて攻撃を行う、魔闘士。
魔導士と戦士の特性を併せ持つ人間は、1000人にひとりいるとかいないとか。
その魔闘士が際立って多いのが、サロランニ軍の特徴だ。
中でも最高位の強魔闘士13人は『カラドの魔闘士』と呼ばれ、一騎当千の働きをする。
サロランニ王国を狙う列強が手を出せない、畏怖の対象だった。
闇の魔法を得意とする魔闘士・ルドーニ。
毒の魔法を得意とする魔闘士・ヴァフィラ。
この二人もまた、サロランニ王国の民を守り、女王を守り、女神ラニマを守るカラドの魔闘士だった。
幼いころから切磋琢磨してきたこの二人は、性格は水と油のようでありながら互いを信じ、戦場で助け合ってきた。
良き戦友のはずだった。
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