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第一章・5
ルドーニは、てきぱきと動き始めた。
かまどに行って火を起こし、湯を沸かす。
同時に野菜や牛乳を用意して、スープを作る準備をする。
ワードローブを開けて、新しい寝着とシーツを出す。
ルドーニの立てる物音を遠い意識で聞きながら、ヴァフィラは熱い息を吐いた。
どうして。
どうして、この男はいつもいつも私にかまうのだ?
体の不調を案じてくれるのは、他の仲間たちも同じだ。
だが、ルドーニだけは、さらに一歩踏み込んでくる。
他人と距離を置こうとがんばる私の思惑を知りながら、その身を、心を近づける。
がたん、と何か大きな音がした。
激しい頭痛におかされている神経に響いたが、不思議と怒りを覚えなかった。
誰かが傍にいてくれる。
その証の物音は、ヴァフィラの神経を高ぶらせるどころか逆に穏やかに鎮めた。
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