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第一章・9
(綺麗だ)
不謹慎とは知りながらも、ヴァフィラの体は我を忘れるほど美しかった。
性別を超越したこの美しい生き物は男でありながら、女好きを謳われるルドーニの心をいつしか捕らえて離さない存在になってしまっていた。
触れたい、このまま愛してしまいたいとの欲求がついつい頭をもたげてくる。
だがしかし。
「ちょっとだけ我慢しろよ」
熱い蒸しタオルで、ルドーニはその体をていねいに拭き清め始めた。
肩から腕、脇の下から胸。
ただひたすら熱心に、それでいて壊れ物を扱う慎重さで優しく体を拭きあげる。
その真摯な行動は、ヴァフィラの心にも響いた。
(思い過ごしか)
そう感じると気が抜けた。
汗で気持ちの悪かった全身が熱いタオルで拭き清められていく心地よさに、ヴァフィラは久々に身も心もわずかではあるが軽くなる思いがした。
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