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第一章・10
ヴァフィラは思いのほか従順で、体を支えるルドーニの腕にすべてを預けている。
時折吐き出される熱い息が悩ましい。
いっそおおいに暴れてくれれば、いらぬ欲望は沸いてこないものを。
これはどんな精神修養より難儀だな、と思いつつルドーニはようやくその全身を清め終えた。
ルドーニはヴァフィラの体を毛布でくるみ、一旦長椅子に横たえた。
清潔なシーツをぱっと広げ、床を作る。
ベッドにその体を移す前に、一応一言尋ねてみた。
「スープ作ったんだけど、飲めそうか?」
「……欲しくない」
だろうな、と答えてその軽い体を抱きかかえ、ベッドへと運んだ。
毛布をはがし新しい寝着を着せてやると、ようやくヴァフィラはほっとしたような表情を作った。
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