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第一章・11
その顔に、ついこちらも笑顔になる。
聖人君子を貫いた己を、自分で褒めてやりたい。
ルドーニは、汲んできたばかりの清水の入った水差しをかかげた。
「水くらい飲めるだろ。いや、飲まなきゃだめだ」
あれだけ大量の汗をかいていたのだ。
おまけにこの高熱に、脱水症状を起こす危険がある。
一刻も早い水分補給が必要かと思われた。
だが、このありさまでは自分で飲むことはままならないだろう。
無理に体を起こして飲ませても、気管に入る恐れがある。
ルドーニは、はぁとため息をひとつつくと、再びヴァフィラに念押しをした。
「怒るなよ? 暴れるんじゃねえぞ?」
「……?」
杯に移した水を一口含み、ヴァフィラの唇にその顔を近づける。
「!?」
ふたりの唇が深く繋がれた。
仰天し、もがこうとしたヴァフィラだったが腕を持ち上げるつもりでも指一本しか動かない。
今度こそ貞操の危機だ。
体が、心がたちまち萎縮していく。
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