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第一章・12

 だがルドーニの唇はそれ以上の動きを取ることはなかった。  やがて、その唇を通して少しずつヴァフィラが欲してやまなかったものが移されてきた。  水だ。  カラカラに乾いていた咥内を、喉を、清水が潤していく。  ヴァフィラは無意識のうちに自ら深く深くルドーニの唇に繋がり、夢中になって喉を鳴らしながら与えられる水を飲んだ。 「もっと」 「はいはい」  ルドーニは何度でも水を口移しでヴァフィラに与え続けた。 (もっと、だなんて罪な事言っちゃってまぁ)  幾度となく唇を重ねようと、それは愛の行為ではなく介護行為でしかない。  残念だ。残念すぎる。  ヴァフィラとの初めてのキスが、まさかこんな形で訪れようとは。  舌を差し入れ、絡めて愛し合いたいとの思いは厳重に封印した。  充分に水を飲み満足したのか、やがてヴァフィラは脱力し、ことんと眠りに落ちた。

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