14 / 459

第一章・14

 ヴァフィラはこんこんと眠り続けた。  洗濯、掃除と家事の合間にひんぱんに寝室へとのぞきに行ってみるルドーニだったが、見られるのは寝顔ばかり。 「眠り姫、ってとこか」  頬にかかる髪を梳いてやりながら、つぶやく。  眠り姫は、王子様のキスで目覚めるんだっけ。  薄く開いたヴァフィラの唇は、見るからにおいしそうだ。  ついふらふらと、何度口を寄せてしまいそうになったことか。 「駄目だめ」  ヴァフィラは今、苦しみの只中にいるのだ。  そんな彼をいただいてしまうような、そんな弱みに付け込むような行為は許されない。  そっと額に手を乗せてみると、熱はずいぶん引いたようだ。  そろそろ起きて、何か口にした方がいいのだがな、とルドーニはすっかり冷めてしまったスープの皿を取り上げると、キッチンへと下げた。

ともだちにシェアしよう!