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第一章・14
ヴァフィラはこんこんと眠り続けた。
洗濯、掃除と家事の合間にひんぱんに寝室へとのぞきに行ってみるルドーニだったが、見られるのは寝顔ばかり。
「眠り姫、ってとこか」
頬にかかる髪を梳いてやりながら、つぶやく。
眠り姫は、王子様のキスで目覚めるんだっけ。
薄く開いたヴァフィラの唇は、見るからにおいしそうだ。
ついふらふらと、何度口を寄せてしまいそうになったことか。
「駄目だめ」
ヴァフィラは今、苦しみの只中にいるのだ。
そんな彼をいただいてしまうような、そんな弱みに付け込むような行為は許されない。
そっと額に手を乗せてみると、熱はずいぶん引いたようだ。
そろそろ起きて、何か口にした方がいいのだがな、とルドーニはすっかり冷めてしまったスープの皿を取り上げると、キッチンへと下げた。
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