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第一章・16
「やばい」
薔薇色の唇は青く乾き、桜貝のような爪は紫に変色している。
このままでは危険だ。
今すぐに温めてやらなければ。
慌てて暖炉を引っ掻き回したが、肝心の薪がない。
それもそのはず、今は真夏なのだ。
普通に考えれば、暖炉など使っているはずがない。
かまど用の薪は残りわずかで、とても足りそうにない。
寝具や寝着を重ねても無駄だ。
保温能力はあるだろうが、肝心の熱源がない事にはどうにもならない。
そうこうしているうちに、ヴァフィラはぴくりとも動かなくなってしまった。
震える体力すらつきかけているのだ。
もはや、一刻の猶予もならない。
「……怒るなよ? 暴れるんじゃねえぞ?」
ルドーニはそうつぶやくと、ばっと服を脱ぎだした。
たちまち全裸になってしまうと、ヴァフィラの眠るベッドへと潜り込む。
そして、ヴァフィラからも寝着を剥いだ。
その体の冷たさに焦りながら素裸にさらすと、しっかりと抱き寄せた。
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