17 / 459
第一章・17
「ヴァフィラ」
ルドーニはヴァフィラにぴったりと肌を合わせ、自分の体温で彼を温めはじめた。
両腕でかき抱き、脚を絡ませた。
甘い香りと、絹のように滑らかな肌。
抜群の抱き心地だった。
だが、今は劣情を感じている場合ではない。
「ヴァフィラ、死んじゃだめだ」
ルドーニは必死だった。
起きてくれ。
そして、いつもみたいに憎まれ口たたいてくれ。
ふと、背中に触れる感触を覚えた。
ヴァフィラが、ルドーニの背中に腕をまわしてきたのだ。
しっかりと抱きつき体を摺り寄せ、その体温を求めてしがみついてくる。
ルドーニは、一層強くヴァフィラを抱きしめた。
氷のように冷たい体だ。
体温が、どんどんヴァフィラに奪われていく。
構わない。
俺の体温全部くれてやる。
だからどうか無事で。
ルドーニは祈りに似た気持ちを持って、ヴァフィラを温め続けた。
ともだちにシェアしよう!