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第一章・18
暗闇の中にいたはずだ。
冷たく、暗い闇の中。
まるで生きているかのように蠢く真紅の霧が体内に入り込み、私を苦しめる。
手綱をかけようにもかけられぬ狂気のような苦しみが、延々続くと思っていたのだ。
このまま命尽きるかと思った時、思った時……。
暖かな光が、太陽のような香りが私を包み……それから……。
ヴァフィラはゆっくりと瞼を開いた。
カーテンの隙間から差し込む光が眼を刺し、反射的に再び眼を閉じた。
「ん……」
「ヴァフィラ?」
低い、優しいささやき。
暖かな、太陽のような香り。
ヴァフィラは再びそろりと目を開けた。
まぶしい光に射られないよう、そっと首を動かした拍子に、広い懐に頬が触れた。
これは……この懐は……。
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