20 / 459

第一章・20

「来るな! 近寄るな!」  寝具を頭まですっぽり被ってしまったヴァフィラを、ルドーニはポン、と枕で軽く叩いた。 「もうすっかり元気だな。よかった」  ヴァフィラは、そっと顔を出しルドーニの様子を伺った。  優しいまなざしだ。  その瞳の奥には、確かにぎらついた劣情はまったく見られない。  もそもそと動き、自分の体を確かめてみる。  特に情事の痕跡も見られない。 「本当に、何もしていないのだな?」 「ホントだって。信じてくれよ~」 「だったらどうして」  二人して裸で抱き合ってベッドの中にいたのだ、と問いかけようとして口ごもった。  恥ずかしくてとても口に出せるような言葉じゃない。  そうこうしているうちに、ルドーニはさっさと服を着てしまった。  新しい寝着をヴァフィラに手渡し、さっさと寝室から出ていってしまった。

ともだちにシェアしよう!