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第一章・22

 ふうふうと匙にとったスープを冷まし、ルドーニはヴァフィラに差し出した。 「はい。あ~ん♪」 「じっ自分でできる! よこせ!」  スープ皿と匙をルドーニから奪い、ヴァフィラはもくもくとスープを口に運んだ。  おいしい。  信じられないくらい、おいしい。  皿は瞬く間に空になった。 「……もっと」 「はいはい」  は、とヴァフィラは再び思い当たった。  唇を重ねたのは、水を飲ませてもらったのだ。  何度でもねだったのは、自分のほう。  ルドーニは、それに応えてくれただけなのだ。  ヴァフィラは、空の皿を手に寝室を出て行く男の背中を見た。  何事もなかったように振舞うルドーニ。  恩に着せるでもなく、見返りを求める事もなく、いつでもその身を、心を近づける。  そして、その行為はいつも温かい。   ぱちん、と音を立てて、自分とルドーニの間に作っていた被膜がはじけた。

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