28 / 459

第二章・5

「じゃあさ、治してやるから」 「そんなことができるのか?」 「俺、最近治癒の魔法の使い方練習してっから」  できるとも、とルドーニはテーブルを挟んでこちら側に乗り出してきた。  ぐいと近づけてくる顔に、ヴァフィラはピンときた。  そういうことか。    ためらいはあった。  だがルドーニの笑顔を作る口にはからかいの色もおどけた様子もなく、真っ直ぐ見つめるまなざしは深い優しさと慈愛に満ちていた。  では、とこちらも黙って顔を近づける。  静かに瞳を閉じると、ルドーニの唇がゆっくりヴァフィラのそれに重なった。  様子を伺うように、何度か軽くついばむ。  やがて角度をつけて深く繋がると、ルドーニはそっと舌を差し入れてきた。  舌と舌が触れ合う。  最初怯えたように竦んだヴァフィラの舌だったが、優しくなでてくるルドーニの舌に、やがて応じて絡ませ始めた。  海の中の柔らかな生き物のように、踊り合うふたつの舌。  つかの間の、甘いひととき。

ともだちにシェアしよう!