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第三章 不治の病の特効薬
ふぅ、と意識が浮上し、ヴァフィラはゆっくり眼を開いた。
一瞬、自分の置かれている状況を見失う。
しばらくの後、ぼんやり思い出す。
あぁ、ここは長椅子の上。
ルドーニと飲んでいて、少し酔ってしまったから横になったのだ。
彼と飲むのは好きだった。
軽快な話題と笑い声に、ついつい杯が進む。
彼と一緒だと、楽しい酒が飲める。
自らの毒のために死の淵の際まで行きかけたところを救い上げられてから、ルドーニはヴァフィラにとって気の置けない存在となった。
深く付き合えば付き合うほど解かる、ルドーニの魅力。
人をからかいはするが、決してバカにすることはないところだとか。
ぶっきらぼうに見えて、その裏には深い優しさがあるところだとか。
心地よいぬくもりが身を包んでいる。
いつの間にか、体には毛布が掛けられている。
ルドーニが掛けてくれたのだ。
そう、粗忽に見えて、こういう細やかな気配りをしてくれるところとか。
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